桜田課長の秘密
バン!
桜貝を乗せた華奢な手がデスクに叩きつけられた。

「なによ、その嫌味な言い方」

私に仕事を押し付けているせいで、自分がヒマだという自覚はあるようで。
ふんわりフェイスが、メデューサフェイスに塗り替えられた。

おーい、朝から派遣が正社員に絡まれてますよー。

助けを求めて、白石課長の方を見る。

20名ほどしかいない室内なのだから、気づかないはずはないのだけど……この役立たず!
ワザとらしく腕時計を見て、逃亡してしまった。

いつか酔ったフリして、頭に乗せてるバレバレの被り物、剥ぎ取ってやるからなっ!

さてどうしたものかと、原口静香に向き直ったときだった。

天の助け。
電話機からのコール音と共に、内線ランプが点灯する。

「ごめんなさい、この話はまた後で――はい、江本です」

しぶしぶ立ち去った彼女にホッとしたのもつかの間。

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