桜田課長の秘密
『それは失礼しました。お忙しいところ恐縮ですが、お願いしたい仕事があるので、こちらに来てください』

「今すぐですかっ」

『はい、大至急です』

「分かりましたっ!」

ガチャンと受話器を叩きつけ、手帳を持って立ち上がった。

「人事2課に行って来ますっ!」

そう言い捨てると、主任がぎょっとしたように目を見開く。

「桜田課長のところに行く……んですか?」

「問題でも? そしてなぜ敬語なんですか?」

「あ……や、別に……はあ」

「ご心配なく、誰にも危害を加えるつもりはありませんから」

パクパクと、金魚のように口を開閉する主任を残して歩き出す。

「巴ちゃん、後で話し聞かせてねっ!」

背後から聞こえたルミさんの声が、キラキラと輝いていた。

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