桜田課長の秘密

しかしまさか、個人的に雇い入れることになるとは――


いや、それはいい。
彼女の資質は僕の生において、大いに役立つだろう。

問題は、この正体不明の感覚だ。

昨夜、頬を赤らめながら、

初めてのキスは、好きになった人としたいんです――

そう言い放ったあのシーンが、頭から離れないのだ。

女という生物に〝情〟を持ったことはない。
けれど人並みな性欲はある。
よって、性に奔放な女たちと適度に肉体関係を結んでいる。

だが、江本巴のようなタイプは初めてだった。

見てくれは悪くない。
いや、はっきり言ってかなり整った顔をしている。
愛想もよく、頭もいい。

それなのに29歳にもなって、処女だというのだ。

< 53 / 90 >

この作品をシェア

pagetop