桜田課長の秘密
そんな女が頬を朱に染め、潤んだ目で『キスは好きな人と』だと?
かと思えば、絶妙な攻撃を繰り出して、颯爽と去っていく。

モヤモヤする……
非常にモヤモヤする。
相田とランチというのも、モヤモヤする。

おそらくこれは未知なるものへの恐れによる、セロトニン神経の機能低下が原因だ。

このままでは、海馬(かいば)の萎縮を招きかねない。
いち早く、活性化を図る必要がある。


おもむろにスマートフォンを手にし、電話帳画面を開く。

ラテン系のポールダンサー、リカコにしよう。

『やだ颯介、久しぶりぃ! ちっとも連絡くれないんだからぁ』

「すみません、お詫びに今夜、会いませんか? 6時半に日帝ホテル。1時間しかありませんが、それでもよければ」

『行く行くー! じゃ、あとでねっ』

救われる……この軽いノリ。
さて、定時に上がるためにも集中しようか。

頭を切り替えて、スマートフォンを鞄に押し込んだ。

< 54 / 90 >

この作品をシェア

pagetop