桜田課長の秘密
「巴ちゃん。どうしたの、そんなに慌てて」
声をかけてきたのは法人営業のエース、相田 涼平さん。
年齢は確か30代半ば……だったと思う。
桜田課長と同い年くらいだが、こちらは営業ということもあり外見に気を配っているのだろう。
長身の体に似合った細身のスーツに、シェパードチェックのネクタイが可愛らしい。
柔らかそうな茶髪はゆるいウエーブを描き、涼しげな奥二重と人懐っこい笑顔が印象的な――いわゆるイケメン。
そんな〝超・優良物件〟が、領収書を手に爽やかな笑みを浮かべているのだから、本来なら喜ぶべきところなんだろう。
けれども私は重い気持ちを隠し、右手を差し出した。
「なんでもありません。確かにお預かりしました、はい。それではお疲れさまです」
領収書を奪い取ると、パソコンに向かって入力作業を開始する。
「あ、うん。ありがとう」
バチンとエンターキーを強めに叩いて、忙しさをアピールしてみた。
けれども流石は押しの強い営業のエース。空席だった隣のデスクに腰を下ろしてしまった。
カタカタカタ――――バチン!
カタカタカタカタカタカタカタ――――
おいエース、なぜ去らない……そしてなぜ上機嫌に笑っている?
声をかけてきたのは法人営業のエース、相田 涼平さん。
年齢は確か30代半ば……だったと思う。
桜田課長と同い年くらいだが、こちらは営業ということもあり外見に気を配っているのだろう。
長身の体に似合った細身のスーツに、シェパードチェックのネクタイが可愛らしい。
柔らかそうな茶髪はゆるいウエーブを描き、涼しげな奥二重と人懐っこい笑顔が印象的な――いわゆるイケメン。
そんな〝超・優良物件〟が、領収書を手に爽やかな笑みを浮かべているのだから、本来なら喜ぶべきところなんだろう。
けれども私は重い気持ちを隠し、右手を差し出した。
「なんでもありません。確かにお預かりしました、はい。それではお疲れさまです」
領収書を奪い取ると、パソコンに向かって入力作業を開始する。
「あ、うん。ありがとう」
バチンとエンターキーを強めに叩いて、忙しさをアピールしてみた。
けれども流石は押しの強い営業のエース。空席だった隣のデスクに腰を下ろしてしまった。
カタカタカタ――――バチン!
カタカタカタカタカタカタカタ――――
おいエース、なぜ去らない……そしてなぜ上機嫌に笑っている?