桜田課長の秘密
騙された――

そう気がついたのは、馬乗りになった彼の手足に閉じ込められたあとだった。

切れ長の目が、スッと細められ。
片方だけ持ち上がった薄い唇が、私を責める。

「逃げない約束でしたよね」

「それは――」

「嘘つきには、お仕置きが必要ですね」

〝お仕置き〟という言葉に、甘い響きを滲ませながら、楽し気に思案するその表情に背筋が凍り付いた。

カタと、障子を揺らせた風が頬をかすめる。

「さて……どう鳴かせましょうか」

不意に伸ばされた彼の指が、私の髪に絡んで滑り落ちると。
神経が通っているはずがない毛髪、一本一本に、得体の知れない熱を感じた。

「綺麗な髪ですね……染めたことは?」

「ありま……せん」

答えると、課長は満足げにうなずいて、耳元に唇を寄せた。

「ねえ、江本さん。意識が飛ぶまで逝かされ続けるのと、気が狂いそうなほど焦らされ続けるなら、どちらがいいですか」

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