桜田課長の秘密
* * *

お昼どきをとうに過ぎた社食は閑散としている。


午後2時。
ようやく急ぎの仕事を終わらせて、お弁当の包みを開く。

相田さんが去った後。
頼まれた大量の印刷作業では、コピー機から目を離すたびに中断されていた。苦労して打ち込んだデータは、トイレから帰って来たら初期化されていた。

おそらくはハイエナ軍団の仕業。

「まいったなあ……」

せっかく社員になれるチャンスなのに、この調子で業務妨害を続けられると査定に響くだろう。早急に相田さんにあきらめて貰って、あわよくばハイエナのボスを食事に誘うように誘導して――

味のしないお弁当を噛みしめながら思案していると、

「相席、よろしいですか?」

向かいの席に男性が座った。
こんなにすいているのに、いったいどうゆうつもりだと顔を上げた瞬間、背中に嫌な汗が伝う。

「さ、桜田課長」

完璧だと思った〝ザ・営業の田中作戦〟が失敗したのだろうか。

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