幼なじみの彼とわたし
そのときーーー。


「何してるんですか!?」

走ってくる足音ともに聞こえてきた大きな声。

目の前の佐原くんもその瞬間体をビクッとさせた。
そして、すぐに彼は「あ」と言い残して走ってどこかに行ってしまった。


そのまま走ってわたしのところに来てくれた声の主は遥ちゃんで。


「大丈夫?立てる?」

へなへなと座り込んでしまったわたしを抱えて部屋まで運んでくれた。
鍵を出そうにも手が震えてしまって、なかなかバッグから取り出せない。


「俺が出すよ」

鍵を出してドアを開けてくれて。
パンプスやコートも脱がせてくれて、リビングのソファへと座らせてくれる。


遥ちゃんは、「ちょっと冷蔵庫あけるね」とお水を出して持ってきてくれたあと、わたしの隣に座ってわたしの顔を覗きこんでくる。


「亜衣?何もされてない?ケガとかない?」

「うん、どこも触られてないし大丈夫。ごめんね、だいぶ落ち着いたから」


お水を飲むと少し落ち着いてきた。
もうこれ以上心配はかけられない。
今できる精一杯の笑顔を作ってみる。


「無理しないの。こわかっただろ?ごめんな、ちゃんと部屋まで送ればよかった。一人にしなきゃよかった。俺のせいだな。亜衣、本当にごめん」

遥ちゃんの今にも泣いてしまいそうな表情にグッとくる。
遥ちゃんはアパートの前までちゃんと送ってくれたのに。
わたしが勝手にコンビニに行ったからなのに。
遥ちゃんは何も悪くなくて。
わたしを助けてくれたのに。

頭を左右に振る。


でもーー。
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