幼なじみの彼とわたし
「…こわかった」


ダメだ、やっぱり涙がこぼれてくる。
全然堪えきれず、嗚咽にかわってしまった。
手で顔を覆っていると、体が少しふわっと浮いてまた落とされた。
そして、力強い何かに包まれる。


顔を覆っていた手を離してみると、ソファに座る遥ちゃんの膝の上に横向きに座っている。
ちょうど遥ちゃんの肩に顔がのる高さだ。

遥ちゃんの腕がぐるっと包み込んでくれて、手が背中を撫でるように上下に優しく動いている。

遥ちゃんの顔を見ると、困ったように笑っているのが見える。


「泣いてるときは、ぎゅーってして、だろ?」


あ、遥ちゃんに失恋したときに言った言葉だ。
覚えててくれたんだ。


「ありがとう」

いつの間にかわたしも遥ちゃんの首元に腕を回していた。

やっぱり遥ちゃんの胸は落ち着くし安心する。
服越しに感じる体温も鼓動も。
わたしに巻きついている腕の強さも背中を上下している手の温もりも。
一度知ってしまうと離れられない。
わたしだけのものになってほしい。


ふと、千尋の「今日ちゃんと気持ちを伝えるのよ!」の言葉が頭に浮かんでくる。
今なら言えるかな、顔も見えないし。


「もう大丈夫だから。ありがとう。でね、このままで聞いてくれる?」

「ん?何?」

声が優しい。


「あのね。・・・・・・好き…なの」


自分でも思ったより声がちっちゃくなってしまった。
ちゃんと聞こえたかな?

反応がなくて、また涙が出そうになる。


「………ごめん、ちょっと…」

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