カッコウ
はじめてのデートは、とても楽しかった。

軽井沢らしいおしゃれなお店で、ランチはイタリアン。その後は公園を散歩して、池でボートにも乗った。

穏やかで明るい孝明に、みどりは安心して一緒にいられた。
 
お互いのことも色々話した。子供の頃のこと、学生時代のこと。スポーツや音楽の話しも。

軽井沢が好きという孝明は、おしゃれな遊び上手だった。
 
一日、茂樹を忘れて過ごしたみどり。

自然と孝明に惹かれている自分に気付く。

誰かの大切な存在になりたいという思いを、孝明なら叶えてくれる。

みどりだけの為に色々考えて楽しませてくれる孝明に、みどりは忘れていた感覚を思い出す。
 
自分はまだ、誰かの一番になれるかもしれない。その資格がある。

そう思うことは、驚くほどみどりを解放した。

「すごく楽しかったです。佐山さん、ありがとう。」

帰りの車の中でみどりが言う。
 
「孝明でいいよ。」と孝明は答える。

それはシャイな孝明の告白。
 
「えー。でも。じゃあ孝ちゃんって呼ぼうかな。」

みどりも照れて言う。そして、
 
「私も。みどりでいいです。呼び捨てで。」

と言うと、孝明はニコッと笑った。

それは告白を受けるというみどりの返事だった。
 
 



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