【番外編5/3UP】その王子、はらぺこ悪魔につき。


わたしをそっと離し、椅子に座らせると

ゆっくりと先輩たちに近づいていくセロは


姿こそ、王子のまま。


鋭い牙も、尖った耳も、黒い翼もない。


一見、品行方正な少年


なのに


「なにか言うことあるんじゃない?」


なんて凄まじい気迫なのだろう。


背中から感じる。


「ねえ」


絶対にこの男を怒らせてはいけないと。


「ヒッ……」


アコ先輩が、手に持っていたハサミをセロに向ける。



「僕を刺したいの?」

「え……」

「刺してみる? 刺せるかな? 君が僕に近づいてくる間に――僕は君たちとその家族を皆殺しにするくらい容赦ないけど」


優しく甘い王子様は、もういない。
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