異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
「ありがとうございます! あと、もう少しだけ時間ってありますか?」
「ああ、大丈夫だが……」
「じゃあ、そこで待っていてもらっていいですか? 生クリームは、もちろんこのまま使うこともあるんですけど、ひと手間加えて使うことのほうが多いんです」
アルトさんの作ってくれた生クリーム、砂糖をボウルに入れて、泡立て器でかき混ぜる。ハンドミキサーがないから時間はかかるけれど、クリームはだんだんかさを増して、雲のようにふわふわになってきた。
「なんだこれは。魔法みたいだな」
私の手元を覗き込んだアルトさんが、子どものような声を出す。魔法使いが『魔法みたい』なんて言うのがおかしくて、頬がゆるんでしまった。
「お砂糖を入れてかき混ぜると、こんなふうにふわふわで甘いクリームができるんです。……よし、こんなものかな。アルトさん、味見してみますか?」
「いいのか?」
「はい、もちろんです。手伝っていただいたので、一番に味見してほしくて」
スプーンに山盛りにした生クリームを手渡すと、アルトさんはぎこちなく受け取ったあと口に運んだ。
雷に打たれたようにハッとした表情になったあと、口元が緩む。目を細めて、生クリームを味わってくれているみたいだ。
「なめらかで、口の中で溶けるようだ……。こってりしていて、でもくどくなく、甘さも優しいな。初めて食べるはずなのになつかしい。幼い頃想像していた雲の味が、こんな感じだったからだろうか」
歌うような声色で紡がれた感想は、意外にもかわいらしくロマンチックなものだった。
「よかった。これを果物や焼き菓子と組み合わせると、夢みたいなスイーツができるんですよ!」
苺のショートケーキや、ロールケーキ。モンブランだって作れる。ちょっと贅沢な、なめらかプリンだって。
「ベイルさんにも、食べてもらいましょうか。生クリームだけだと、たくさんは食べられないので、クレープ焼いちゃいますね」
売り場にあるテーブルに、生クリームと果物をくるんだ焼きたてクレープを持って行く。苺やバナナがあればよかったのだが、秋だからりんごとマロン、ぶどうの組み合わせだ。作り置きしておいたキャラメルソースをかけると、それなりの見た目になった。
「うわっ、どうしたんですか、これ! 今までのスイーツとは全然違う見た目ですね」
私が説明しようとする前に、アルトさんが腰に手を当てながら口を開いた。
「これは、生クリームというものだ。俺が作るのを手伝ったんだぞ」
「で、殿下が……!」
ベイルさんは、生クリームに感動したのか『アルトさんが作った』ということに感動したのかわからないが、涙目になってクレープ食べていた。
「お、おいしいです……。バターの一歩手前のものがこんなにおいしくなるんですね。これを殿下がお作りになられたなんて、すごいです。いや、作ったのはエリーちゃんだけど」
まるで、はじめてのおつかいが成功したときのお母さんみたいだ。
「ベイル、お前はいちいち大げさなんだよ」
そんなベイルさんに軽口を叩きながらも、アルトさんはクレープを食べるたびに「ふふん」と満足げな笑みを浮かべていた。
「ああ、大丈夫だが……」
「じゃあ、そこで待っていてもらっていいですか? 生クリームは、もちろんこのまま使うこともあるんですけど、ひと手間加えて使うことのほうが多いんです」
アルトさんの作ってくれた生クリーム、砂糖をボウルに入れて、泡立て器でかき混ぜる。ハンドミキサーがないから時間はかかるけれど、クリームはだんだんかさを増して、雲のようにふわふわになってきた。
「なんだこれは。魔法みたいだな」
私の手元を覗き込んだアルトさんが、子どものような声を出す。魔法使いが『魔法みたい』なんて言うのがおかしくて、頬がゆるんでしまった。
「お砂糖を入れてかき混ぜると、こんなふうにふわふわで甘いクリームができるんです。……よし、こんなものかな。アルトさん、味見してみますか?」
「いいのか?」
「はい、もちろんです。手伝っていただいたので、一番に味見してほしくて」
スプーンに山盛りにした生クリームを手渡すと、アルトさんはぎこちなく受け取ったあと口に運んだ。
雷に打たれたようにハッとした表情になったあと、口元が緩む。目を細めて、生クリームを味わってくれているみたいだ。
「なめらかで、口の中で溶けるようだ……。こってりしていて、でもくどくなく、甘さも優しいな。初めて食べるはずなのになつかしい。幼い頃想像していた雲の味が、こんな感じだったからだろうか」
歌うような声色で紡がれた感想は、意外にもかわいらしくロマンチックなものだった。
「よかった。これを果物や焼き菓子と組み合わせると、夢みたいなスイーツができるんですよ!」
苺のショートケーキや、ロールケーキ。モンブランだって作れる。ちょっと贅沢な、なめらかプリンだって。
「ベイルさんにも、食べてもらいましょうか。生クリームだけだと、たくさんは食べられないので、クレープ焼いちゃいますね」
売り場にあるテーブルに、生クリームと果物をくるんだ焼きたてクレープを持って行く。苺やバナナがあればよかったのだが、秋だからりんごとマロン、ぶどうの組み合わせだ。作り置きしておいたキャラメルソースをかけると、それなりの見た目になった。
「うわっ、どうしたんですか、これ! 今までのスイーツとは全然違う見た目ですね」
私が説明しようとする前に、アルトさんが腰に手を当てながら口を開いた。
「これは、生クリームというものだ。俺が作るのを手伝ったんだぞ」
「で、殿下が……!」
ベイルさんは、生クリームに感動したのか『アルトさんが作った』ということに感動したのかわからないが、涙目になってクレープ食べていた。
「お、おいしいです……。バターの一歩手前のものがこんなにおいしくなるんですね。これを殿下がお作りになられたなんて、すごいです。いや、作ったのはエリーちゃんだけど」
まるで、はじめてのおつかいが成功したときのお母さんみたいだ。
「ベイル、お前はいちいち大げさなんだよ」
そんなベイルさんに軽口を叩きながらも、アルトさんはクレープを食べるたびに「ふふん」と満足げな笑みを浮かべていた。