異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
 言われたとおり、おとなしく厨房を観察して待つ。たくさんの寸胴鍋とオーブン、いくつもの調理台。働いている人は全部で十人で、広さは前世の日本でいうと二十畳くらいだろうか。
 お城に住んでいる王族だけでなく、騎士団や勤めている人たちのぶんの食事をまかなっているんだから、これだけ広くても当然だ。

 観察していると、お皿や食器、メニューにもランクがあるようで、一番豪華なものは王族用なのだなとわかった。ローストビーフがかたまりのままでん、と載っているのも高級なお皿だけだ。おそらく、その場で料理人が切り分けるのだろう。

 お昼の鐘と同時に、慌ただしい時間が終わる。盛り付けられたお皿たちは、メイドたちが運んでいった。

「よし、俺たちも飯にするか。今日のまかないはローストビーフ、パン、野菜スープ、苺タルトだ。席に着けよ」

 料理人さんたちは各々、はじっこに積んであったスツールを持って調理台のまわりに集まる。テーブルがわりの調理台には、お皿に盛られた料理が所狭しと並んでいた。

 そういえば、私もランチを持ってきていたんだっけ。エプロンのポケットに入れておいたベーコンとチーズ入りのしょっぱいマフィンを取り出すと、料理長さんが私を呼んだ。

「おーい、エリーさん! そんなとこに座ってないでこっちに来いよ! うちのまかないは天下一品だぞ?」
「え、でも、まだなにも働いてないのに……。いいんですか?」

 驚いて、もごもごと返すが、聞こえていないみたいだ。

「えー、なんだって? 聞こえないから俺の隣に来てくれ」

 手招きされては行くしかない。使っていたスツールを持って、料理長さんの隣に腰を下ろした。ちゃんと、私のぶんの食事も用意されている。

「よし、じゃあ全員そろったな。今日も王さまたちのおかげで豪華なまかないが食えるってもんよ。感謝しながらいただくぞ」
「はい!」

 とたん、料理人さんたちは勢いよくまかないを食べ始めた。騎士団と同じくらい、いい食べっぷりだ。

「エリーさんも、遠慮しないで食いな」
「は、はい。ありがとうございます」

 白いお皿に盛られた厚切りローストビーフと、付け合せのマッシュポテト、サラダ。ローストビーフには赤ワインがベースのソースがかかっている。野菜スープの具も大きくてごろごろしている。これは、庶民の家だったらスープじゃなくてポトフって呼ぶものだ。

 パンもふかふかしているのが見ただけでわかる。大粒の苺がぎっしり載ったタルトもおいしそう。これは私のレシピで作ってくれたみたいだけど、私が作るよりも見栄えがいいかも……。

 ローストビーフを口に運ぶと、あまりのやわらかさに目が点になった。
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