異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
「こっから俺が話すことは、城で働く者たちならみんな知ってることだ。アルファート王子自体も、そのことをわかっていると思う。そのことを頭に入れて聞いてくれ」
「はい」

 私も姿勢を正して、料理長さんの言葉にじっと耳を傾けた。

「王族が魔法を使えるというのは知っているな。ただ、魔法使いといっても万能じゃない。生まれたときに、使える魔法や得意な魔法は全部決まるんだ。そいつの生まれ持った資質で特性で決まるって話だが、本当かどうかはわからねえ」

 魔法については無知な私だが、それについてはなんとなく気付いていた。アルトさんは、物質を変化する魔法が得意と言っていた。ということは、苦手な魔法も、使えない魔法もあるということだ。

「上ふたりの王子の得意魔法はな、軍事利用しやすい魔法なんだ。平たく言えば攻撃魔法だな。アルファート王子の得意魔法は知っているか?」
「物質変化です」
「そうだ。兄王子と比べて、軍事利用はしづらい魔法だ。今の陛下は、国の軍事面を伸ばそうとしている。魔法石が産出して豊かになって、他国との貿易も増えたが……。それはそのぶん危険も増えたということだ」

 もし他の国が、ルワンド国に戦争をしかけて魔法石を奪おうとしたら――。軍事面が秀でていることは抑止力になる。王様の考えは間違ってはいない。いないけど……。

「だから、幼少期からアルファート王子は陛下に『あいつはダメだ。あいつには期待しない』と差別的な扱いを受けていたんだよ。アルファート王子の生誕祭だけ質素なのも、あからさまなえこひいきだな」
「そんな……」

 魔法の特性が自分の望んだものじゃなかったからって、自分の子どもを差別するなんて。

 前世の施設でも、ほかのきょうだいはかわいがられているのにその子だけは虐待されて預けられた子もいた。王子という身分だから衣食住が保証されているだけで、心の中はあの子と同じように傷ついていると思ったら、胸が張り裂けそうだった。

「でもな、それだけだったら周りの者も同情していただろうさ。なのにアルファート王子は思春期になると、市井に下りて遊びほうけるようになっちまった。城の居心地が悪かったんだろうな。庶民の間で悪評は立つわ、注意されても飄々と受け流すわで、陛下は手を焼いている様子だった。それが王子の、精一杯の反抗だったのかもしれないが……」

 自分にはそれくらいしか能がないから、と言っていたが、市井に下りることはアルトさんの逃避でもあったんだ。
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