異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
「そうしていつからか、アルファート王子は『ハズレ王子』と呼ばれるようになっちまったんだよ」
「でも、アルトさんが市井を視察してくださっていたおかげで、私を見つけてくれました。それに、獣人さんたちのことだって……」
「ああ、わかってる。俺たちも、最近の王子のことは見直してきているんだ。だから成功させたいんだよ、生誕祭をな」
「……はい」

 がまんしていた涙が、ひとつぶだけぽろっとこぼれた。料理長さんは私の背中をさすって「王子は本当にいい友人を持ったな」と慰めてくれた。

 私は、いい友人なんかじゃない。アルトさんがお兄さんたちと比較されていたのは知っていたのに、その裏にある悲しみのことなんて、今までちっとも考えたことがなかった。こんなに毎日一緒にいたのに、気付くことも理解することも、してあげられなかった。

 それが悔しくて、自分に腹が立つ。

「エリーさんの……、いや、俺たちのスイーツの力で、絶対にいい生誕祭にしてやろうぜ」

 料理長さんの力強い言葉に、私はうつむいたまま、こくりと頷いた。

 軍事力だけが国のためになる力じゃないって、私は思う。アルトさんの魔法はもっと、違うことで人の役に立つんじゃないかな。生クリームやチョコレートの開発にアルトさんの力が要ったように、アルトさんの魔法じゃないとできないことが、この国にもあるはず。

 でも私、魔法の特性なんてなければいいのに、と思いながら、アルトさんの魔法が軍事利用できるようなものじゃなくてよかったってホッとしてる。

 その人の資質で魔法の特性が決まるなら、アルトさんには平和な力が似合うって、そう思うから。

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