異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
 その後、しばらくお城に通うようになって、いろいろなことがわかってきた。

 第一王子と第二王子は頭脳明晰で、歳に似合わない冷静沈着さを身につけているとか。ふたりとも、お妃さまに似た金髪のクールビューティーだとか。アルトさんは唯一、王さまと同じ黒髪なのだそうだ。

 優秀と褒めつつも、兄王子の話をするときのお城で働く人たちの表情は硬い。メイドさんからは、『冷たい』とか『こわい』なんて言葉も飛び出した。
 合理主義で、弟が差別されていてもかばいもしない。王族としての誇りが高すぎて周りにも完璧を求める――。それが、みんなの話をきいて浮かび上がった兄王子たちの人物像だ。

 評判を聞けば聞くほど、アルトさんとは真逆で想像もつかない。王妃様は中立な方らしいが、夫には逆えず言いなりになっているらしい。

 本当に、アルトさんにはベイルさんしか理解して味方になってくれる人がいなかったんだ。だからベイルさんも、騎士としては出過ぎたことも言うし、兄がわりとして心配してきた。護衛係にしては気安すぎるような気がしたのも、ベイルさんがあえてそうしていたのだと思う。

 そして今日は、何回目かになる屋台のミーティングだ。ラッピングして売るものはアイシングクッキーになったのだが、肝心のメインのスイーツが決まっていないのだ。

 クレープやプリンなど試作してはみたのだが、悪くないけどインパクトに欠けるということで決め手がなかった。クレープはそば粉のクレープのイメージが強いので屋台よりもお店の新作で広めてからのほうがいいし、プリンは蒸すのに時間がかかる。

 でも今回は自信がある。昨日の夜思いついたアイディアを書きとめた紙を、私はドキドキしながら料理長さんに見せた。

「どれどれ……。今回もいろいろ考えてきてくれたんだな。……ん? この、ふわふわパンケーキってのはなんだ?りんごのパンケーキなら以前教えてもらったが……」

 来た。私が今までの中で一番自信があるメニュー。それに食いついてもらえたことがうれしい。

「メレンゲを入れて食感をふわふわにしたパンケーキなんです。しゅわってとろけるみたいになるんですよ!」

 ドキドキしながら説明すると、料理長さんの眉が「ほう」と上がった。

「シフォンケーキみたいに、メレンゲを作るのか。りんごは入れないんだな。そうすると、見た目が物足りなくないか?」
「はい、パンケーキ自体の見た目はシンプルなものになるんです。だったら飾り付けを工夫すればいいと思って。その、下に書いてある部分を見てください」
「トッピングをいろいろ変えてメニューにするのか。山盛りホイップクリーム、ベリーミックス、チョコソース……。どれも目を引くし映えそうだな。フライパンでこんなスイーツが作れるなんて、驚いたな」

 どの試作品も決め手に欠けるなら、日本でブームになったスイーツはどうだ、と考え付いたものだ。
 日本とルワンド国ではスイーツの進化具合も違うので、受け入れてもらえるか不安だったが、このぶんだとこの国でも通用しそうだ。

 そして、日本にブームになったスイーツがもうひとつ。
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