異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
* * *
「いやあ~、いい天気だ。祭り日和だな、エリーさん」
「そうですね。晴れてよかったです」
料理長さんが、屋台を設置する手を止めて空を見上げた。私も、板に打ちつけたメニュー表を持ったまま返事する。
いよいよ、お祭りの初日がやってきた。国中の人が詰めかけるから、これから三日間大忙しだ。
中日は王族のパレード、最終日は閉会セレモニーがある。そのほかにも特設ステージでは毎日、有志の人による楽器の演奏や踊り、歌の披露が行われる。
「こうして準備をしていても、いろんなお店があってわくわくしますね」
目立つのは食べもののお店だけど、小物や花、野菜なんかも売っている。牧羊犬ふれあいコーナーを見たときは、ガルフさんとナッツくんを思い出して会いたくなった。「モフモフだからってほかの動物といっしょにするな」って怒られそうだけど。
「エリーさんは、お祭りに来たことは?」
「家族で何回か。私が住んでいたのは下町なので、距離があって毎年は無理でしたけど」
私が少し大きくなって、双子が生まれる前の何年かだけ、両親とふたりで来た思い出がある。その双子の弟妹が生まれてからは、長時間馬車に乗せるのが無理で、自然と足が遠のいた。
「そうか。でもこれからはきっと毎年来ることになるな。仕事としてだが」
調理長さんがにやりと笑って返す。本当にそうなれば光栄なのだが。
「毎年、屋台が出せたらありがたいですね」
「出せるさ。この国にスイーツが広まってほかの店ができたとしても、エリーさんの店は特別だからな。もしかしたら、百年後くらいには歴史上の偉人になっているかもしれないぜ」
「そんなまさか」
驚いて首を振ったのだが、そういえば前世でもそういった偉人はいた。サンドイッチを発明したサンドイッチ伯爵とか、麻婆豆腐で有名な麻ばあさんとか、料理に名前がついている人だってけっこういる。
自分がそうなるかもしれない? いや、まさかね。
「自分の名前は残らなくてもいいですけど……。アルトさんの功績は後世に伝わってほしいです」
そうつぶやくと、料理長さんが甘酸っぱいものを食べたときのような顔で私を見ていた。
「ど、どうしたんですか?」
「いやあ、若いっていいなと思ってね」
「は、はぁ……」
そんな話をしているうちに、屋台のテントが完成した。看板もメニュー表もばっちりだ。
屋台の見た目は、市場で使うシンプルな布テントとほぼ同じだ。タピオカ用に厨房総出で作った厚紙ストローも、数は充分ある。
「よし、だいたいの骨組みはできたな。俺は厨房から調理器具を持ってくるから、エリーさんは材料を頼む」
重いものを運び込んだり、クッキーの設置をしているうちに、開催のファンファーレが響き出した。
「いやあ~、いい天気だ。祭り日和だな、エリーさん」
「そうですね。晴れてよかったです」
料理長さんが、屋台を設置する手を止めて空を見上げた。私も、板に打ちつけたメニュー表を持ったまま返事する。
いよいよ、お祭りの初日がやってきた。国中の人が詰めかけるから、これから三日間大忙しだ。
中日は王族のパレード、最終日は閉会セレモニーがある。そのほかにも特設ステージでは毎日、有志の人による楽器の演奏や踊り、歌の披露が行われる。
「こうして準備をしていても、いろんなお店があってわくわくしますね」
目立つのは食べもののお店だけど、小物や花、野菜なんかも売っている。牧羊犬ふれあいコーナーを見たときは、ガルフさんとナッツくんを思い出して会いたくなった。「モフモフだからってほかの動物といっしょにするな」って怒られそうだけど。
「エリーさんは、お祭りに来たことは?」
「家族で何回か。私が住んでいたのは下町なので、距離があって毎年は無理でしたけど」
私が少し大きくなって、双子が生まれる前の何年かだけ、両親とふたりで来た思い出がある。その双子の弟妹が生まれてからは、長時間馬車に乗せるのが無理で、自然と足が遠のいた。
「そうか。でもこれからはきっと毎年来ることになるな。仕事としてだが」
調理長さんがにやりと笑って返す。本当にそうなれば光栄なのだが。
「毎年、屋台が出せたらありがたいですね」
「出せるさ。この国にスイーツが広まってほかの店ができたとしても、エリーさんの店は特別だからな。もしかしたら、百年後くらいには歴史上の偉人になっているかもしれないぜ」
「そんなまさか」
驚いて首を振ったのだが、そういえば前世でもそういった偉人はいた。サンドイッチを発明したサンドイッチ伯爵とか、麻婆豆腐で有名な麻ばあさんとか、料理に名前がついている人だってけっこういる。
自分がそうなるかもしれない? いや、まさかね。
「自分の名前は残らなくてもいいですけど……。アルトさんの功績は後世に伝わってほしいです」
そうつぶやくと、料理長さんが甘酸っぱいものを食べたときのような顔で私を見ていた。
「ど、どうしたんですか?」
「いやあ、若いっていいなと思ってね」
「は、はぁ……」
そんな話をしているうちに、屋台のテントが完成した。看板もメニュー表もばっちりだ。
屋台の見た目は、市場で使うシンプルな布テントとほぼ同じだ。タピオカ用に厨房総出で作った厚紙ストローも、数は充分ある。
「よし、だいたいの骨組みはできたな。俺は厨房から調理器具を持ってくるから、エリーさんは材料を頼む」
重いものを運び込んだり、クッキーの設置をしているうちに、開催のファンファーレが響き出した。