異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
「始まったな。これからどんどん人が来るぞ」
「パンケーキは置いておくとしぼむので、作るタイミングが難しいですね」
「タイミングなんて考えなくても、次から次へと焼いていけばすぐに売れるさ。……ほら、もう客が来た」
開場と同時に広場になだれ込んできた人たちが、もう屋台の前まで来ている。料理長さんは、あらかじめ作っておいたパンケーキの生地を私にすばやく渡し、自分は生クリームを泡立てている。
「い、いらっしゃいませ!」
「この、ベリーパンケーキとホイップパンケーキをひとつずつお願い。あとこのクッキーも二袋いただけるかしら」
「はい、かしこまりました。焼き時間がありますので少々お待ちください」
これから三日間、余計なことを考える暇がないくらい忙しくなりそう。そう感じながら、私はパンケーキの生地をフライパンに流し込んだ。
「な、なんでこんなことに……」
数時間後には、私たちの屋台の前には長蛇の列ができていた。どうやら、食べた人の口コミでふわふわパンケーキとタピオカが広まったらしい。
「くっ、メレンゲを泡立てすぎて手が痛いのなんて初めてだぜ」
ひたすら泡立て器をしゃかしゃか動かしてくれていた料理長さんのこめかみには、血管が浮いている。
「い、一日目の材料、夕方までもたないかもしれません。生クリームとベリーがもう……」
「まだお昼を過ぎたばかりだっていうのに、すさまじい勢いだな……」
私たちがぐったりしつつも目を血走らせてひたすら注文に対応していたそのとき、
「エリーちゃん、大丈夫?」
聞き覚えのある柔らかい声が近くから響いた。
「ベイルさん、ミレイさん!」
ふたりが、仲良く身体を寄せ合ってお祭り会場を散歩しているところだった。
「うわ、すごい列だな。大丈夫かい、エリーちゃん」
「顔色が悪いわ。休んだほうがいいんじゃ」
ふたりは、列に気を遣いながら屋台のそばの私まで駆け寄ってくれる。
「悪い。ここまで混むと思わなくてかわりの人員を用意していないんだ。本当なら俺とエリーさんが交替で休憩を取るはずだったんだが」
ミレイさんの言葉に料理長さんが答えた。
「だったら、俺たちが入るよ。いいかな、ミレイちゃん」
「もちろんです。私もお手伝いします」
言うが早いか、ふたりは腕まくりをしながら屋台の中に入ってくる。
「ええっ、で、でも。せっかくおふたりで遊びに来たのに……」
「俺はこの店の用心棒だろ。エリーちゃんが困っているのを助けるのは当然だ」
「ベイルさん……」
騎士団の稽古がお休みの貴重な日。せっかくのデートなのに私たちの手伝いで潰してしまっていいのだろうか。
「エリーさん、ここはお言葉に甘えないか。幸い、あと数時間くらいで材料は切れる。そうしたら店じまいできるから、それまでの間交替で休憩を取らせてもらうんだ。祭りは明日も明後日もあるんだ。明日からは人数を増員するから、今日は俺たちが持ちこたえないと」
私がもたもたしていると、料理長さんがそう助言をしてくれた。
「パンケーキは置いておくとしぼむので、作るタイミングが難しいですね」
「タイミングなんて考えなくても、次から次へと焼いていけばすぐに売れるさ。……ほら、もう客が来た」
開場と同時に広場になだれ込んできた人たちが、もう屋台の前まで来ている。料理長さんは、あらかじめ作っておいたパンケーキの生地を私にすばやく渡し、自分は生クリームを泡立てている。
「い、いらっしゃいませ!」
「この、ベリーパンケーキとホイップパンケーキをひとつずつお願い。あとこのクッキーも二袋いただけるかしら」
「はい、かしこまりました。焼き時間がありますので少々お待ちください」
これから三日間、余計なことを考える暇がないくらい忙しくなりそう。そう感じながら、私はパンケーキの生地をフライパンに流し込んだ。
「な、なんでこんなことに……」
数時間後には、私たちの屋台の前には長蛇の列ができていた。どうやら、食べた人の口コミでふわふわパンケーキとタピオカが広まったらしい。
「くっ、メレンゲを泡立てすぎて手が痛いのなんて初めてだぜ」
ひたすら泡立て器をしゃかしゃか動かしてくれていた料理長さんのこめかみには、血管が浮いている。
「い、一日目の材料、夕方までもたないかもしれません。生クリームとベリーがもう……」
「まだお昼を過ぎたばかりだっていうのに、すさまじい勢いだな……」
私たちがぐったりしつつも目を血走らせてひたすら注文に対応していたそのとき、
「エリーちゃん、大丈夫?」
聞き覚えのある柔らかい声が近くから響いた。
「ベイルさん、ミレイさん!」
ふたりが、仲良く身体を寄せ合ってお祭り会場を散歩しているところだった。
「うわ、すごい列だな。大丈夫かい、エリーちゃん」
「顔色が悪いわ。休んだほうがいいんじゃ」
ふたりは、列に気を遣いながら屋台のそばの私まで駆け寄ってくれる。
「悪い。ここまで混むと思わなくてかわりの人員を用意していないんだ。本当なら俺とエリーさんが交替で休憩を取るはずだったんだが」
ミレイさんの言葉に料理長さんが答えた。
「だったら、俺たちが入るよ。いいかな、ミレイちゃん」
「もちろんです。私もお手伝いします」
言うが早いか、ふたりは腕まくりをしながら屋台の中に入ってくる。
「ええっ、で、でも。せっかくおふたりで遊びに来たのに……」
「俺はこの店の用心棒だろ。エリーちゃんが困っているのを助けるのは当然だ」
「ベイルさん……」
騎士団の稽古がお休みの貴重な日。せっかくのデートなのに私たちの手伝いで潰してしまっていいのだろうか。
「エリーさん、ここはお言葉に甘えないか。幸い、あと数時間くらいで材料は切れる。そうしたら店じまいできるから、それまでの間交替で休憩を取らせてもらうんだ。祭りは明日も明後日もあるんだ。明日からは人数を増員するから、今日は俺たちが持ちこたえないと」
私がもたもたしていると、料理長さんがそう助言をしてくれた。