異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
「そうですね……。じゃあ、お言葉に甘えることにします。ベイルさん、ミレイさん、ありがとうございます」

 ミレイさんにはタピオカミルクティーを担当してもらうことになった。冷蔵庫で冷やしているミルクティーが減ってきたら、新しく淹れて冷やす。タピオカはたくさん作り置きしているので、注文が入ったらそれを入れればいいだけだ。

 力自慢のベイルさんには、メレンゲ作りをとお客さま対応を任せることに。これで私たちはパンケーキの焼き具合とデコレーションに集中できる。

「じゃあ先にエリーさん、休憩に行ってきてくれ。一時間くらいで交替でいいか?」
「はい、ありがとうございます」

 私はエプロンを脱いでミレイさんに渡し、開場してから初めて、屋台の外に出たのだった。

「ふう……」

 比較的すいている場所を探して、ベンチに座り込む。手には、目に着いた店で買ったサンドイッチと飲み物。使い捨てのプラスチックカップなんてものはないので、飲み終わったら木のカップは返しにいかないといけない。

 目の前を、たくさんの人が楽しげに通り過ぎてゆく。遠くのステージから聞こえる音楽に耳をすませながら、私は遅めの昼食を摂った。

「さてと……。そろそろ行こうかな」

 サンドイッチを包んでいた紙を、空になったカップを持って立ち上がろうとする。
 しかし、一度座ってしまうと身体が重くて腰が上がらないことに気付いた。自分がこんなに疲れていたことに驚く。夢中で動いているときは疲れがマヒしていたんだなあ。火事場の馬鹿力、というやつだろうか。

 まあ、いいや。もともとお祭りを見てまわる気力はないし、ここで休憩時間いっぱいぼうっとしていよう。

「あれ~? もしかしてお姉ちゃん?」

 目を閉じてうとうとしていると、また聞き覚えのある声が近くからした。今度は、さっきよりも近い。

「……ナッツくん?」

 目を開けると、私の顔を覗き込むようにしている人型のナッツくんがいた。うしろには、ガルフさんもいる。ふたりとも以前より小奇麗なマントをつけていた。日雇い労働で得たお金で買ったのかもしれない。

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