異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
「やっぱりお姉ちゃんだ! こんなところでどうしたの?」

 ナッツくんはがばっと私に抱きついてくる。私はベンチに座ったまま受け止めて、リスの姿じゃなくてもふわふわの髪の毛を撫でた。

「私は屋台の休憩中で……。ナッツくんとガルフさんはどうしたの?」

 会いたいなと思ってはいたけれど、まさかお祭りで会えるとは思っていなかった。

「あんたが屋台を出すって聞いて、ナッツが祭りに行きたがって……。でも場所がわからなくて迷っていたんだ」
「わざわざ、そのために来てくれたの……」

 人が多い場所は怖いはずなのに、それでも来てくれたその気持ちがうれしかった。

「獣人用じゃないから僕たちは食べられないけど。でも、お姉ちゃんが屋台を出してるところが見たくて」

 う~ん、と頭を働かせる。せっかく来てくれたのだから、ふたりにもなんとかして新メニューを食べてもらいたい。

「そうだ! パンケーキだったら、砂糖を入れないでベリーをトッピングするのはどうかな。甘さがなくてもふわふわの食感は味わえると思うよ。タピオカミルクティーも、特別に果物ジュースで作ってあげる」

 カフェインがダメなら、飲めるもので代用すればいいのだ。パンケーキだって、ベリーの甘さで補完できるし、はちみつを少し入れてもいいかもしれない。

「本当? いいの?」

 ナッツくんの瞳がきらきらと輝く。

「もちろん! ただ今、すごい行列ができてて……。早く並ばないと売り切れちゃうかも」
 裏からこっそり渡してもいいんだけど、もし他のお客さんに見られたらふたりが顰蹙(ひんしゅく)をかってしまうだろうし。

「大変、早く行かなきゃ! ガルフ、早く早く!」
「場所がわからないと言ったばかりだろう」

 ガルフさんに道を教えると、ふんふん頷きながら聞いていた。フードがぽこぽこしていたのは、真剣に聞いて耳が動いているせいだろうか。

「じゃあ、お姉ちゃん、またあとでね!」

 ふたりは手を振りながら去っていった。さっきまで戻るのが苦痛なくらいだったけれど、ふたりに会えて急に元気が出てきた。それに、私が戻るよりも先にふたりの順番が来てしまったら、特別メニューが出せなくなってしまう。

「待って、ふたりとも! 私も一緒に屋台に戻るね!」

 立ち止まってくれたふたりのもとに駆け寄って、ナッツくんと手を繋いだ。

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