異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
 そして次の日、お祭りの二日目。昨日は夕飯も食べずにぐっすり眠ったおかげで、すっかり疲れは取れていた。十代の体力ってすごい。

 料理長さんがかけあってくれたおかげで材料も潤沢にあるし、交替の人も来てくれたので今日は安心感がある。パンケーキを焼きながらお客さまとおしゃべりする余裕もできた。

「そろそろパレードだな。交替のやつも来てくれたし、エリーさんは休憩に行ってきていいぞ」

 お昼を少し過ぎたくらいの時間、料理長さんがそう言ってくれた。

「通り沿いはパレード待ちの人で埋まっていると思うが、ソプラノのあたりだったら少し距離があるからすいているかもしれないな。近くで見たいなら、行ってみるといい」
「ありがとうございます。そうしてみます!」

 急いで、お店方面に向かう。広場の近くの通りは、歩道の幅びっしりに人が並んでいたが、お祭りの会場から遠ざかるほど人は少なくなる。料理長さんの言ったとおり、ソプラノのあたりまで行くと前の人の頭の間からパレードが見えるくらいの混み具合になった。

 ドキドキしながら待っていると、お城の方角から鼓笛隊の音楽か聞こえてきた。

「おっ、始まったぞ」

 見物人たちがわあっと歓声をあげる。パレードのスタート地点はお城で、貴族街をぐるりと一周してまたお城に戻っていく。毎年ルートは同じなので、こうしてみんな時間前から待機しているというわけだ。

 鼓笛隊の音が近付いてくるたびに、胸の鼓動が大きくなる。

 どうして私、王子としてパレードに参加するアルトさんを見るのが、うれしいような怖いような、ふしぎな気持ちなんだろう。胸がドキドキしてふわふわして、自分のものじゃないみたい。
 
 わけのわからない気持ちを整理できないまま、ついにパレードがソプラノの前まで来た。
 揃いの服を着て山高帽をかぶった鼓笛隊、そして後ろに続く、白馬に引かれたきらびやかな白い馬車。

 王様とお妃様の乗った馬車のあとは、兄王子ふたりが乗った馬車が来た。若い女性たちがきゃーきゃー歓声をあげている。

 金髪碧眼のお兄さんたちは変身後のアルトさんの姿によく似ていた。第一王子は長い髪をひとつに束ねて片眼鏡をかけ、第二王子は短い髪をしていて体格もしっかりしている。見た感じの印象では、第一王子は参謀系、第二王子のほうは騎士系という感じだ。ふたりとも、白地に金の刺繍がほどこされた、ザ・王子様な服を着ている。

 にこやかに手を振っている様子は、冷たいと噂されていた王子と同一人物とは思えない。

「お、次はアルファート王子だぞ」

 アルトさんの名前が聞こえて心臓がばくんと鳴る。

 三台目の馬車が近付いてきて、中にはお兄さんたちとおそろいの白いフロックコートを着たアルトさんがいた。
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