異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
 想像通りの、爽やかだけど少し引きつった笑顔で手を振っている。あれは、笑顔を作りすぎて口元が疲れてきた、という顔だ。

 なんだ、よかった。格好は王子様だけれど、中身はいつものアルトさんだった。

 ……ん? どうして私、アルトさんがいつも通りなことにほっとしているんだろう。

 その時、笑顔をふりまいていたアルトさんとバチッと目が合った。一瞬にして笑顔が消え、驚いた表情をしている。

(アルトさん、笑顔、笑顔!)

 そう口の動きだけで伝え、手を振り返す。

 アルトさんに伝わったのか、取ってつけたような笑顔に戻った。でも、私のほうは見てくれない。

 仕方ないか。こんなにたくさんの人がいる中、一瞬でも目が合っただけでも感謝しなくちゃ。

 パレードの最後尾を務めるのは王宮騎士団だ。ベイルさんはきりっとした表情で隊の最後尾を担っていた。要所要所で、レプリカの剣を掲げたり、隣の人とクロスさせたり、楽しませてくれる。

 王子たちと同じくらい女性の黄色い声があがり、騎士団のファンもいるんだと初めて知った。日本だったら、戦隊ヒーローのファンになっていたような人たちだろうか。王子のファンは、正統派アイドルかな。こんなふうに前世に当てはめると、貴族の女性たちも身近に感じられて楽しい。

 そんなこんなで、二日目は特にトラブルもなく無事終了した。

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