異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
「すごい!」
「なんだこれは!」
「第三王子が用意したのか?」
ざわめきの中から、そんな声が聞こえてくる。やっぱりルワンド国の人は、花火を見たことがないようだ。
ベイルさんに目線をやると、次々と大砲に砲弾を詰めていた。でも、それだけで打ち上げる操作はしていない。そもそも、大砲で花火を打ち上げられるのだろうか?
疑問に思ってアルトさんのいるバルコニーを見上げると、指をひょい、ひょいと動かしているのが見える。その動きが花火の打ち上げるタイミングと合っているので、私は確信した。
花火を打ち上げているのは、アルトさんの魔法だ――! そして花火玉自体も、軍で使う用の砲弾を、アルトさんの魔法で変化させたんだ。
「アルトさん……すごい……」
見せたいものって、花火のことだったんだ。アルトさんの魔法はもっと国民のために使えると思っていたけれど、こんなことを考えていたなんて。
まだ魔法を使い続けているアルトさんと、目が合う。
私は内緒でここにいることなんてすっかり忘れて、ぴょんぴょん飛び跳ねながらアルトさんに手を振ってしまった。
「アルトさん! すごいです! 花火を見てこんなに感動したの、初めてです!」
バルコニーまで距離があるし、この騒音の中だ。私の声がアルトさんに届いていたかどうかはわからない。でも、私を見ていたアルトさんは急に表情を硬くして、目を逸らした。
「アルトさん……?」
離れているからはっきりとはわからないけれど、顔色が少し赤いような気がする。そして、指の動作もなんだかぎこちなくなっている。
どうしたんだろう、と思ったとき、ベイルさんの慌てた声が聞こえた。
「あっ!」
えっ、と思って目線を動かすと、打ち上げに失敗した火薬玉が、私のそばにごろんと転がってきていた。
「えっ」
あわてて飛びのいたけれど、火薬玉から燃え移った火が、芝生を伝って足元まで来ている。
「あぶない、エリーちゃん!」
ベイルさんがそばにあった桶で噴水の水を火薬玉にかける。でもその間に、火は私のエプロンに燃え移っていた。
「あ、あわわ……」
パニックになって、その場で腰を抜かしてしまう。
「エリーちゃん、噴水に飛び込んで!」
ベイルさんの声が聞こえるけど、足ががくがく震えて動かない。
「あ、アルトさん、助けて……」
涙目になりながらバルコニーを見上げると、アルトさんは手すりから身を乗り出して叫んでいた。
「エリー! 今すぐ助ける!」
アルトさんがなにか呪文を唱えると、噴水の水がぼこぼこっと沸騰したように盛り上がる。
「……え?」
なにが怒っているのか理解する間もなく、噴水に大きな水柱が立ち、大量の水が私めがけて降ってきた。
「あっぷ……!」
ホースで水をかけられたどころじゃない衝撃に、その場に倒れ込む。息をしようとすると、水が肺に流れ込んでくる。苦しい……。
もしかしてこれは、溺れているのだろうか。このまま私は、死んでしまうのだろうか。
恐怖を感じる前に、意識が遠のいていく。
「エリー! エリー……!」
真っ暗な視界の中で、アルトさんの焦った声が遠くから聞こえる。
「エリーちゃん、大丈夫か!?」
大きくてたくましい手が私を抱え上げるのを感じて、私の意識は途切れた。
「なんだこれは!」
「第三王子が用意したのか?」
ざわめきの中から、そんな声が聞こえてくる。やっぱりルワンド国の人は、花火を見たことがないようだ。
ベイルさんに目線をやると、次々と大砲に砲弾を詰めていた。でも、それだけで打ち上げる操作はしていない。そもそも、大砲で花火を打ち上げられるのだろうか?
疑問に思ってアルトさんのいるバルコニーを見上げると、指をひょい、ひょいと動かしているのが見える。その動きが花火の打ち上げるタイミングと合っているので、私は確信した。
花火を打ち上げているのは、アルトさんの魔法だ――! そして花火玉自体も、軍で使う用の砲弾を、アルトさんの魔法で変化させたんだ。
「アルトさん……すごい……」
見せたいものって、花火のことだったんだ。アルトさんの魔法はもっと国民のために使えると思っていたけれど、こんなことを考えていたなんて。
まだ魔法を使い続けているアルトさんと、目が合う。
私は内緒でここにいることなんてすっかり忘れて、ぴょんぴょん飛び跳ねながらアルトさんに手を振ってしまった。
「アルトさん! すごいです! 花火を見てこんなに感動したの、初めてです!」
バルコニーまで距離があるし、この騒音の中だ。私の声がアルトさんに届いていたかどうかはわからない。でも、私を見ていたアルトさんは急に表情を硬くして、目を逸らした。
「アルトさん……?」
離れているからはっきりとはわからないけれど、顔色が少し赤いような気がする。そして、指の動作もなんだかぎこちなくなっている。
どうしたんだろう、と思ったとき、ベイルさんの慌てた声が聞こえた。
「あっ!」
えっ、と思って目線を動かすと、打ち上げに失敗した火薬玉が、私のそばにごろんと転がってきていた。
「えっ」
あわてて飛びのいたけれど、火薬玉から燃え移った火が、芝生を伝って足元まで来ている。
「あぶない、エリーちゃん!」
ベイルさんがそばにあった桶で噴水の水を火薬玉にかける。でもその間に、火は私のエプロンに燃え移っていた。
「あ、あわわ……」
パニックになって、その場で腰を抜かしてしまう。
「エリーちゃん、噴水に飛び込んで!」
ベイルさんの声が聞こえるけど、足ががくがく震えて動かない。
「あ、アルトさん、助けて……」
涙目になりながらバルコニーを見上げると、アルトさんは手すりから身を乗り出して叫んでいた。
「エリー! 今すぐ助ける!」
アルトさんがなにか呪文を唱えると、噴水の水がぼこぼこっと沸騰したように盛り上がる。
「……え?」
なにが怒っているのか理解する間もなく、噴水に大きな水柱が立ち、大量の水が私めがけて降ってきた。
「あっぷ……!」
ホースで水をかけられたどころじゃない衝撃に、その場に倒れ込む。息をしようとすると、水が肺に流れ込んでくる。苦しい……。
もしかしてこれは、溺れているのだろうか。このまま私は、死んでしまうのだろうか。
恐怖を感じる前に、意識が遠のいていく。
「エリー! エリー……!」
真っ暗な視界の中で、アルトさんの焦った声が遠くから聞こえる。
「エリーちゃん、大丈夫か!?」
大きくてたくましい手が私を抱え上げるのを感じて、私の意識は途切れた。