異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
 * * *

 頭が、ガンガンする。身体も熱くてだるい。目を開けたいのに、まぶたが重くて動かせない。

「う……」

 まだ半分夢の中で、身体がふかふかしたものに沈み込んでいることに気付く。寝返りを打つと、しゃらしゃらした肌触りのいい布の感触を感じる。

 あれ? おかしいな。いつも夢から醒めるときと、なにかが違う。

「うぅん……」

 違和感と危機感をおぼえ、必死でまぶたを開くと、目に入ってきた光景に一瞬にして意識が覚醒した。

「えっ……。ここ……どこ?」

 うちの家がすっぽり収まりそうなただっ広い部屋には、シャンデリアと豪華絢爛な調度品が飾られていた。ビロード張りのソファ、猫脚のテーブル。私が寝かされているのも、天蓋付きの大きなベッドだ。普段使っているベッドみっつぶんくらいの横幅がある。

 ここはおそらく、お城の中だ。ぼんやりとしか思い出せないが、花火を見たあと気を失ってしまった気がする。熱っぽいのは、水を浴びたせいだろうか。

 きっとベイルさんが、客室かどこかに運んで寝かせてくれたのだと思う。
 気を失ったままでは家に帰せないから仕方ないとしても、庶民がこんなところで寝ていていいのだろうか。

 身を起こそうとするけれど、身体が重くて持ちあがらない。諦めて、ふわふわの枕にぼすっと後頭部をうずめる。

 仕方ない、誰かが来るまでじっとしていよう……。そう決めて再び目を閉じたとき、扉の外からばたばたと人の足音が聞こえてきた。

「兄上、止めないでください。私のせいで寝込んでいる友人を見舞うだけです!」

 アルトさんの声だ。私の様子を見に来てくれたみたいだ。心細かったからうれしいけれど、兄上っていうのは、まさか。

「友人か。本当かどうかわかったもんじゃないな。お前があんなバカなことをしたのも、あの娘を喜ばせるためなんだろう?」

 やっぱり。閉会式のときに聞いた第一王子の声だ。相手がアルトさんだからだろうか、あのときよりもずっと、冷淡で嘲笑まじりの話し方だ。
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