異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
「お前の使ったのは、王族の魔法じゃない。王族の魔法は自分ではなく国民のためにあるものだ。お前がしたことは、ただ自分の自尊心を満たすためだけの行為だ」
冷たい氷の矢がぐさりと、私の胸に刺さった。そこから心が凍りついていくような、そんな攻撃的な言葉だった。
「ああすれば、国民の目が自分に向いて、父上からの待遇もよくなると思ったのか? 残念だったな、思惑通りにいかなくて」
「兄上……。俺は、そんなつもりじゃ」
「見舞いも好きにしたらいい。友人だろうが愛人だろうが、お前がどんな女と付き合っていても、父上は気にも留めないだろうさ」
カツカツカツ……とひとりぶんの足音が去っていく。アルトさんの気配はまだ扉の向こうにあるのに、物音がしない。
呆然と、途方に暮れて立ち尽くしているアルトさんの姿が目に浮かんだ。
どんなに説明してもお兄さんにわかってもらえず、肉親とは思えないような冷たい言葉しかかけてもらえない。
私には、アルトさんは本当に国民のみんなを喜ばせようとして花火を上げたんだってわかる。自分の地位をよくしたいとかそんな裏はまったくなくて、ただ自分の魔法で人の役に立ちたかっただけなんだ。
出会ってまだ半年ちょっとの私でわかることなのに、どうして生まれてからずっと見てきた家族がわからないの。最初から、わかろうとしていないの?
もしかしたら泣いているかもしれないアルトさんの手を取ってあげたいのに、この身体はまったく言うことをきかない。
しばらくすると、扉が静かに開いた。
「……エリー。眠っているのか?」
返事をすればよかったのに、会話を盗み聞きしたのが気まずくて寝たふりをする。
アルトさんの足音が近付いてきて、ベットがぎしっと軋んだ。アルトさんがベッドの端に腰を下ろしたのだとわかった。
「熱が高いな……」
おでこに手が当てられる。ひんやりして気持ちよかったのに、アルトさんの大きな手はすぐ離れてしまった。
「一番喜ばせたかった相手を、こんな目に遭わせるなんてな……」
大きなため息が吐き出される。
今目を開けたら、余計驚かせるだろうか。迷った末、そのまま狸寝入りを続ける。
「怖い思いを、苦しい思いをさせてすまない……」
アルトさんがベッドから立ち上がる音がして、今度は頭のそばのスプリングが軋んだ。
「……おやすみ」
耳元で優しい声がして、おでこに柔らかくてあたたかいものが触れる。
足音が遠ざかって、ぱたんと扉が閉まる音がしたあと、ぱちっと目を開ける。
い、今のって、もしかして……。
アルトさんが触れたおでこに手を当てる。さっきよりも熱が上がったような気がして、私は叫び出しそうな衝動を抑えるように布団を顔まで引き上げた。
冷たい氷の矢がぐさりと、私の胸に刺さった。そこから心が凍りついていくような、そんな攻撃的な言葉だった。
「ああすれば、国民の目が自分に向いて、父上からの待遇もよくなると思ったのか? 残念だったな、思惑通りにいかなくて」
「兄上……。俺は、そんなつもりじゃ」
「見舞いも好きにしたらいい。友人だろうが愛人だろうが、お前がどんな女と付き合っていても、父上は気にも留めないだろうさ」
カツカツカツ……とひとりぶんの足音が去っていく。アルトさんの気配はまだ扉の向こうにあるのに、物音がしない。
呆然と、途方に暮れて立ち尽くしているアルトさんの姿が目に浮かんだ。
どんなに説明してもお兄さんにわかってもらえず、肉親とは思えないような冷たい言葉しかかけてもらえない。
私には、アルトさんは本当に国民のみんなを喜ばせようとして花火を上げたんだってわかる。自分の地位をよくしたいとかそんな裏はまったくなくて、ただ自分の魔法で人の役に立ちたかっただけなんだ。
出会ってまだ半年ちょっとの私でわかることなのに、どうして生まれてからずっと見てきた家族がわからないの。最初から、わかろうとしていないの?
もしかしたら泣いているかもしれないアルトさんの手を取ってあげたいのに、この身体はまったく言うことをきかない。
しばらくすると、扉が静かに開いた。
「……エリー。眠っているのか?」
返事をすればよかったのに、会話を盗み聞きしたのが気まずくて寝たふりをする。
アルトさんの足音が近付いてきて、ベットがぎしっと軋んだ。アルトさんがベッドの端に腰を下ろしたのだとわかった。
「熱が高いな……」
おでこに手が当てられる。ひんやりして気持ちよかったのに、アルトさんの大きな手はすぐ離れてしまった。
「一番喜ばせたかった相手を、こんな目に遭わせるなんてな……」
大きなため息が吐き出される。
今目を開けたら、余計驚かせるだろうか。迷った末、そのまま狸寝入りを続ける。
「怖い思いを、苦しい思いをさせてすまない……」
アルトさんがベッドから立ち上がる音がして、今度は頭のそばのスプリングが軋んだ。
「……おやすみ」
耳元で優しい声がして、おでこに柔らかくてあたたかいものが触れる。
足音が遠ざかって、ぱたんと扉が閉まる音がしたあと、ぱちっと目を開ける。
い、今のって、もしかして……。
アルトさんが触れたおでこに手を当てる。さっきよりも熱が上がったような気がして、私は叫び出しそうな衝動を抑えるように布団を顔まで引き上げた。