異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
* * *
「いやあ、こうして見るとすごい量だな」
お城の大広間に、王宮料理人総出で作ったスイーツを運び込む。普段だったら舞踏会などに使われているこの場所が、生誕祭の会場だ。
「大広間なんて初めて入りました。すごいですね……」
映画のスクリーンで見たような、現実離れした光景に私は目を奪われていた。
無数のクリスタルが輝くシャンデリア、傷ひとつない大理石の床。ゆるやかにカーブを描く、バルコニーにつながる左右対称の階段。
こんなところでアルトさんの生誕祭をするなんて、こぢんまりしたお誕生会しか経験のない私とは身分が違う人なんだなと改めて実感する。
「まあ、そうだな。でもエリーさんは今日、王子を祝うんじゃなくて、ひとりの友人の誕生日を祝いたいんだろ?」
ぼうっと会場を見回している私の肩を、料理長さんがぽんと叩く。その言葉にハッとした。
「そうでした。私、大事なことを忘れるところでした」
王子とか庶民とか、つまらないことを考えていた。私は今日、『アルトさん』のためにここにいるんだ。大事な友人を祝うのに、身分なんて関係ない。
「料理長さん、ありがとうございます。私、張り切ってセッティングしますね」
「ああ。王族の度肝を抜かせてやろうぜ」
前世のケーキバイキングを参考にし、いくつもの長テーブルにテーブルクロスをかけ、大きなお皿に一種類ずつ、プチスイーツを並べていく。
王家の紋章の形が浮かび上がる、ジャムサンドクッキー。りんごを薔薇の形にしたアップルパイ。苺のムースに、モンブラン。ひとくちサイズのフルーツタルトに、色とりどりのマカロン。宝石のようなスイーツたちは、こんな華やかな場所に置いたってひけを取らない。
そして、より特別感を出すために、クレープをその場で焼いて提供する。ホテルの朝食で、シェフがオムレツを焼いてくれることから思いついたものだ。トッピングを選んでもらって、くるっと巻いてお皿に乗せる。料理長さんと私でフライパンをふたつ用意してあるから、クレープシュゼットも作れる。
「……ふう、できた」
すべてのセッティングが完了する頃には、準備にもらった時間ぎりぎりになっていた。生誕祭は夕方から始まって、舞踏会も兼ねて夜に終わる。
「もう王族の人たちは集まってきてるんでしょうか」
お城の外から来る王族の人たちもいるが、今はどうしているのだろう。控え室でもあるのだろうか。
「前日から来てるんじゃないか? 今は自分に割り当てられた部屋でゆっくりしているだろうさ」
「そうか、そうですよね」
電車や飛行機のある日本じゃないんだから、馬車で時間をかけて来た人は泊まりでゆっくりするに決まっている。
「生誕祭が始まったら俺たちも忙しくなるだろうから、厨房でゆっくりしていようぜ」
「また山ほどクレープを焼くのでしょうか」
パンケーキを一生分焼いたお祭りを思い出して、つぶやく。
「さあな。でもまあ、それも面白いだろ」
料理長さんは腕に握りこぶしを作るポーズをして、笑った。
「いやあ、こうして見るとすごい量だな」
お城の大広間に、王宮料理人総出で作ったスイーツを運び込む。普段だったら舞踏会などに使われているこの場所が、生誕祭の会場だ。
「大広間なんて初めて入りました。すごいですね……」
映画のスクリーンで見たような、現実離れした光景に私は目を奪われていた。
無数のクリスタルが輝くシャンデリア、傷ひとつない大理石の床。ゆるやかにカーブを描く、バルコニーにつながる左右対称の階段。
こんなところでアルトさんの生誕祭をするなんて、こぢんまりしたお誕生会しか経験のない私とは身分が違う人なんだなと改めて実感する。
「まあ、そうだな。でもエリーさんは今日、王子を祝うんじゃなくて、ひとりの友人の誕生日を祝いたいんだろ?」
ぼうっと会場を見回している私の肩を、料理長さんがぽんと叩く。その言葉にハッとした。
「そうでした。私、大事なことを忘れるところでした」
王子とか庶民とか、つまらないことを考えていた。私は今日、『アルトさん』のためにここにいるんだ。大事な友人を祝うのに、身分なんて関係ない。
「料理長さん、ありがとうございます。私、張り切ってセッティングしますね」
「ああ。王族の度肝を抜かせてやろうぜ」
前世のケーキバイキングを参考にし、いくつもの長テーブルにテーブルクロスをかけ、大きなお皿に一種類ずつ、プチスイーツを並べていく。
王家の紋章の形が浮かび上がる、ジャムサンドクッキー。りんごを薔薇の形にしたアップルパイ。苺のムースに、モンブラン。ひとくちサイズのフルーツタルトに、色とりどりのマカロン。宝石のようなスイーツたちは、こんな華やかな場所に置いたってひけを取らない。
そして、より特別感を出すために、クレープをその場で焼いて提供する。ホテルの朝食で、シェフがオムレツを焼いてくれることから思いついたものだ。トッピングを選んでもらって、くるっと巻いてお皿に乗せる。料理長さんと私でフライパンをふたつ用意してあるから、クレープシュゼットも作れる。
「……ふう、できた」
すべてのセッティングが完了する頃には、準備にもらった時間ぎりぎりになっていた。生誕祭は夕方から始まって、舞踏会も兼ねて夜に終わる。
「もう王族の人たちは集まってきてるんでしょうか」
お城の外から来る王族の人たちもいるが、今はどうしているのだろう。控え室でもあるのだろうか。
「前日から来てるんじゃないか? 今は自分に割り当てられた部屋でゆっくりしているだろうさ」
「そうか、そうですよね」
電車や飛行機のある日本じゃないんだから、馬車で時間をかけて来た人は泊まりでゆっくりするに決まっている。
「生誕祭が始まったら俺たちも忙しくなるだろうから、厨房でゆっくりしていようぜ」
「また山ほどクレープを焼くのでしょうか」
パンケーキを一生分焼いたお祭りを思い出して、つぶやく。
「さあな。でもまあ、それも面白いだろ」
料理長さんは腕に握りこぶしを作るポーズをして、笑った。