異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
「クレープ、ナッツのトッピングで。ベリーソースをかけてちょうだい」
「かしこまりました」

 生誕祭が始まり、私はソプラノの制服、料理長さんはコック服で給仕をしている。

 なにか開催の挨拶はあるのかなと思っていたら、室内楽の生演奏が始まり、王族たちが入ってくるというゆるやかな始まり方だった。最後には挨拶はあるみたいだが。

 アルトさんはロイヤルブルーのフロックコートを着ているが、見慣れたいつもの服ではなく王族仕様のきらびやかなものだ。胸元の併せや袖、背中側の裾にも金色の糸で刺繍が入っており、動くたびにきらきらと光る。胸元のクラヴァットもいつもより大きく、フリルが何段にもなっている。
 こんな衣装でも難なく着こなして、ワイン片手に他の王族と会話している。

 男性王族の衣装も華やかではあるのだが、見ていて楽しいのは女性の衣装だ。舞踏会仕様の床につきそうな丈のドレスは色とりどりでそれぞれに意趣が凝らされていて、つい細かいところまで見てしまう。絶対にそんな機会はないだろうけど、一生に一度はあんなドレスが着てみたい。

 閉会式では見ることのできなかった国王陛下もいる。重そうな王冠をかぶってはいないが、長く伸ばした髪の毛と髭はさすがに威厳があって、おいそれと近寄れないオーラが漂っている。

「はい、お待たせしました」

 クレープを盛り付けると、すぐに次の人が寄ってくる。さすがに王族の人は並ぶということはしないが、好評のようだ。

「お待たせしました。……あっ」

 次に悠々とした足取りでやって来たのは、アルトさんだった。アルトさんを観察していてもまったく目が合わなかったからクレープに興味がないのかと思ったけど、しっかりチェック済みではないか。
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