異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
「ベリーのトッピングに、チョコレートソースを頼む」
「かしこまりました。……えっと」

 お祝いの言葉を述べようとして、迷う。私は料理人としてここに来ているので、王族に親しげな口をきくのはマズイのかも。でも、なにも言わないのも失礼にあたるのだろうか。

 クレープを焼きながら、どうしようかとアルトさんをちらちら見上げていると、ぷっと吹き出された。

「なんだ、緊張しているのか?」
「いえ、そんなことはないです。……殿下」

 アルトさんはわかっていないようだったので、あえて禁じられていた単語を口にする。案の定、むっとした顔をされた。

「……好きなように会話もできないのでは、つまらないな」

 ふーっとため息をついたあと、気を取り直すように私に向き合った。

「どのスイーツもうまかったぞ。特にあの薔薇のアップルパイはいいな、見た目が気に入った」
「あ、ありがとうございます」
「お前に頼んでよかったよ。腹の中ではなにを考えているかわからない連中の中にいても、スイーツがあるだけでいつもより楽しい」

 盛り付けたクレープを渡しながら、ハッとしてアルトさんの顔を見る。

「アルトさ……、殿下」
「じゃあな。礼はちゃんと、後日する」

 アルトさんはひらひらと手を振って、輪の中に戻っていった。

「よかったな、エリーさん」

 隣で一部始終を見ていた料理長さんが、こそっと声をかけてくる。

「はい」

 あんな言葉が聞けただけで、私がここに来た意味はあった。でも、本番はここからだ。

「そろそろいい時間だな。メインスイーツの準備に移るか」

 王族たちはスイーツを食べながらの歓談を終え、踊りに移行している。窓の外を見ると、すでに夜になっていた。

「そうですね。行きましょう」

 厨房に置いてあった、白くて丸いスイーツをワゴンに載せ、大広間まで押していく。私の心臓は、緊張でドキドキと音を立てていた。
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