異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
「エリーさん、大丈夫か?」
「は、はい。うまくいくか不安で」

 口の中がからからで、言葉がつかえてしまう。

「大丈夫だ。ほかの連中がどう思おうが、アルファート王子に喜んでもらえないわけがない。そうだろ?」
「……そうです」

 私のお祝いの気持ちをめいっぱい詰め込んだんだ。アルトさんには伝わると信じてる。

「じゃあ、開けるぞ」

 いよいよ、大広間の前まで来た。段取りのとおり、料理長さんが扉を開け、給仕係に合図をした。

「あら」
「なにかしら」

 シャンデリアの明かりが落とされ、フロアが真っ暗になる。

「なんだこれは、演出か?」

 ざわめく声に及び腰になっていると、料理長さんが私の背中を叩いてくれた。

「エリーさん、行け」
「はい」

 カートをガラガラと押して中に入ると、王族の目が一気に集まる。

「まあ……綺麗ね」

 大きな丸い、二段重ねの苺のショートケーキ。そこに刺さっているのは、二十六本分のろうそくだ。クッキーにチョコペンで文字を書いた『アルフォート殿下 お誕生日おめでとう』のプレートも飾ってある。

 私がフロアの中央まで進み出たところで、料理長さんが声を張り上げる。

「このスイーツは誕生日ケーキという名前で、他国では有名な文化です。年齢分のろうそくを立てるのが習わしで、もうひとつ大事な要素があります。お聞きください」

 一番緊張していた役目が、来た。
 身体が小刻みに震えているけれど、やるしかない。暗くてまわり人の顔が見えないのが幸いだ。

 私はすうっと息を吸い込んで、歌い始めた。
 メロディは、『ハッピーバースデートゥーユー』。


 お誕生おめでとう
 お誕生日おめでとう
 お誕生日おめでとう 大切なアルファート殿下
 お誕生日おめでとう


 この国の言語をメロディーに合わせるためにちょっとだけ歌詞をアレンジした、『ハッピーバースデートゥーユー』を、震える声で歌い切る。
< 97 / 102 >

この作品をシェア

pagetop