異世界でお菓子を振舞ったら、王子と竜騎士とモフモフに懐かれました
「では、本日の主役のアルファート殿下。ケーキの側までお越しください」
静寂の中、アルトさんの息をのむ音が聞こえた。
ためらいがちな足音が近付いてきて、長身のシルエットが私の前に立つ。
「……エリー」
ああ、ろうそくの灯りのおかげで、泣きそうな顔をしているアルトさんが見える。
「それでは、ろうそくの火を息で吹き消してください」
料理長さんの説明があったが、アルトさんは戸惑っている様子だ。
「……いいのか」
「はい。一気にいっちゃってください」
アルトさんの身が屈められ、ふーっと、二十六本の火が吹き消される。
その瞬間、シャンデリアの灯りがつき、私と料理長さんがありったけの力をこめて拍手を送った。
徐々に王族の人たちも拍手に混ざってくれ、最後には会場全員の拍手になる。
「アルトさん。お誕生日おめでとうございます。生まれてきてくれてありがとう」
拍手の音にまぎれこませるように、アルトさんに向けてささやいた。
「エリー……、お前」
何かを考えている様子だったアルトさんが、ぐっと眉間に力を入れた。
「エリー、俺は決めたぞ」
「えっ?」
「見ていてくれ。一世一代の大勝負だ」
アルトさんはくるりと観衆に向き直ると、手を胸に当てる王族のお辞儀をした。拍手が止まり、みんなの視線がアルトさんに集まる。
アルトさんは頭を上げ、明瞭な声で話し始めた。
「――皆さま。本日は私の生誕祭にお集まりいただきありがとうございます。実は、この場を借りて宣言したいことがございます」
小さなざわめきが、波紋のように広がった。不安になって国王陛下のほうを見ると、第一王子と第二王子に囲まれて険しい顔をしている。
これからなにが起こるかわからないけれど、私はアルトさんを信じなきゃ。
両手をぎゅっと握りしめて、アルトさんの背中にエールを送る。
「私には、物質変化の魔法があります。ずっと考えていました、この魔法をこの国のために生かせる方法はないのかと」
そのひとつが、お祭りの花火だったはずだ。アルトさんの魔法には可能性があるって、アルトさんもちゃんと、同じことに気付いていたんだ。
「この国は土壌が悪く、長い間食糧難に苦しめられていました。魔法石が産出され他国との貿易が活発になりましたが、根本が解決されないままでは貿易に問題が起こったときに再び食糧難が起こりかねない。……それになにより、私はこの国で、みなが喜んでくれるおいしいものを育てたいと思ったのです」
そこで言葉を切ったアルトさんは、ちらっと私を見た。希望に満ち溢れた、今までで一番アルトさんらしい笑顔だった。
静寂の中、アルトさんの息をのむ音が聞こえた。
ためらいがちな足音が近付いてきて、長身のシルエットが私の前に立つ。
「……エリー」
ああ、ろうそくの灯りのおかげで、泣きそうな顔をしているアルトさんが見える。
「それでは、ろうそくの火を息で吹き消してください」
料理長さんの説明があったが、アルトさんは戸惑っている様子だ。
「……いいのか」
「はい。一気にいっちゃってください」
アルトさんの身が屈められ、ふーっと、二十六本の火が吹き消される。
その瞬間、シャンデリアの灯りがつき、私と料理長さんがありったけの力をこめて拍手を送った。
徐々に王族の人たちも拍手に混ざってくれ、最後には会場全員の拍手になる。
「アルトさん。お誕生日おめでとうございます。生まれてきてくれてありがとう」
拍手の音にまぎれこませるように、アルトさんに向けてささやいた。
「エリー……、お前」
何かを考えている様子だったアルトさんが、ぐっと眉間に力を入れた。
「エリー、俺は決めたぞ」
「えっ?」
「見ていてくれ。一世一代の大勝負だ」
アルトさんはくるりと観衆に向き直ると、手を胸に当てる王族のお辞儀をした。拍手が止まり、みんなの視線がアルトさんに集まる。
アルトさんは頭を上げ、明瞭な声で話し始めた。
「――皆さま。本日は私の生誕祭にお集まりいただきありがとうございます。実は、この場を借りて宣言したいことがございます」
小さなざわめきが、波紋のように広がった。不安になって国王陛下のほうを見ると、第一王子と第二王子に囲まれて険しい顔をしている。
これからなにが起こるかわからないけれど、私はアルトさんを信じなきゃ。
両手をぎゅっと握りしめて、アルトさんの背中にエールを送る。
「私には、物質変化の魔法があります。ずっと考えていました、この魔法をこの国のために生かせる方法はないのかと」
そのひとつが、お祭りの花火だったはずだ。アルトさんの魔法には可能性があるって、アルトさんもちゃんと、同じことに気付いていたんだ。
「この国は土壌が悪く、長い間食糧難に苦しめられていました。魔法石が産出され他国との貿易が活発になりましたが、根本が解決されないままでは貿易に問題が起こったときに再び食糧難が起こりかねない。……それになにより、私はこの国で、みなが喜んでくれるおいしいものを育てたいと思ったのです」
そこで言葉を切ったアルトさんは、ちらっと私を見た。希望に満ち溢れた、今までで一番アルトさんらしい笑顔だった。