eternal〜守りし者〜
その後、報告を聞いた将我は奈緒を"打ち首に"と怒り心頭であったが、自分に原因があると言い張る将季に免じて容態が良くなったら里へ返すという条件でその場を収めた。それから奈緒は一言も話す事なく1日のほとんどを布団の中で過ごした。そんな奈緒にお松は毎日書物を読んで聞かせたり、独り言の様に話しかける事を辞めなかった。そして、空我も度々奈緒の部屋を訪ねた。とは言え空我が部屋へ入る事は無い。廊下に座り襖を少しだけ開けて奈緒に話し掛けた。そんなある日、いつもの様に奈緒の部屋を訪れた空我が襖の隙間から1通の文を差し出した。"奈緒殿、母君からの文にございます"お松がそれを奈緒に渡すと、奈緒は黙ってそれを読んだ。それには母、知寿(ちず)の苦しい胸の内が書かれていた。奈緒に城への話が舞い込んだ頃、店の番頭に金を全て持ち逃げされたあげく借金を背負わされ途方に暮れていた矢先だったという。父にとって、奈緒を城へ行かせ支度金をもらうという事は苦渋の決断だったという…。それでも父はそれを悔やみ借金を返した今も毎日早朝に出掛け城の見える丘へと登り奈緒に"申し訳ない"と頭を下げ詫びる日々を送っているというのだ。それを読み終えると奈緒は声に出して泣いた。思いっきり泣いた。"あなたは…とても愛されておられる。あなたの帰りを待っておられる方々がいらっしゃる場こそ、あなたの居場所では御座らんか?"そう言って空我は部屋を離れた。