ノクターン
私は、父の言葉を信じて 一生懸命勉強し 大きな会社に就職した。
そこは、待遇も良く 若い私でも、余裕のある生活ができた。
でもそこまでだった。
例えば私が、あのまま 康平と付き合い続けて結婚したなら。
多分、余裕のある生活は できたと思う。
二人で働いて、いずれ 都内にマンションを買うくらいには。
子供を中学から私立に通わせたり、年に一度は家族で海外旅行に行ったり。
まわりから、羨ましいと思われる生活はできたと思う。
私は、それで良いと思っていた。
その上の生活は、努力で手に入るものではない。
選ばれた人だけに 与えられるものだと知ったから。
だから、それで十分だと思っていた。
でも今、私は智くんの腕の中 子供の頃からの夢を 手に入れようとしている。
智くんが 私を選んでくれたから。
智くんのご両親が それを認めてくれたから。
そして私達に 惜しみない愛と援助を与えてくれるから。