ノクターン

「涙出ちゃった。こんな二人を 引き離しておいたこと、罪に思うわ。」
 

「本当だね。智之も 生き生きする訳だ。今までは 魂を半分置き忘れていたんだから。」
 


お父様とお母様の言葉に みんながしんみりする。
 


「兄貴に言われるまで 忘れていたんだ。でも、見られて良かったよ。」


私達は、見つめ合って頷く。
 


「こんな小さな頃から、智之の事 好きだったの?」お兄様が 私に聞く。
 


「好きとか、まだ良くわからなくて。でも智くんと居ると すごく楽しかったんです。ずっと一緒にいても 全然飽きなくて。イヤな思いした事 一度もなかったし。いつまでも一緒にいたいって 思っていました。」
 


「俺は、好きだって認識していたよ。麻有ちゃんより2つ上だから。でも、どうしようもなかったからね。」



私達の答えを、みんなが真剣に聞いている。
 

「本当に 仲が良かったのよ。いつも二人で楽しそうに笑っていて。すごく可愛かったのよ。二人が遊んでいると。」お母様は、懐かしい目をする。
 


「智之は、大きくなると だんだん無口になっていったけど。翼を片方 失くしたようなものだったのね。」
 


「もう大丈夫だよ。本来の俺に戻ったからね。色々、心配かけたけど。」


智くんが いつになく真面目に言う。


照れもせずに。
 


「やだ、智之。涙出ちゃうじゃない。」と言うお母様。
 

「一心同体なんだよ、二人は。麻有ちゃんを 悲しませるような事をしたら 全部、自分に返ってくからね。」

お父様の言葉は、いつもありがたい。
 


「俺と沙織だって、一心同体だよね。」

お兄様が明るく言う。


やっぱり ムードメーカーはお兄様だった。
 

「もちろん。全部、紀之さんに 返っていくのよ。」お姉様も笑う。
 


「はあ。まだ何もしてないじゃない。」


いつもの、明るい空気を取り戻す。


温かく、和やかな。
 
 
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