ノクターン

「お父さん、ありがとうございます。麻有ちゃんが頑張ってくれたから、再会できたんです。麻有ちゃんを見守って、協力してくれた家族があったから、俺達また出会えたんです。これからは、麻有ちゃんが楽しく暮らせるように 僕が全力で守ります。今までの分も 親孝行できるように。」


智くんの声も かすれていた。

母も妹も 鼻をすすっている。
 

「奇跡ってあるんだね。智くんとなら 何も心配ないよ。麻有子は これから先は ずっと幸せだよ。だから、もう泣くな。」

父の声に 私は顔を上げる。
 

「ありがとう。」

まだ、涙で話せない。
 
「明日、ウエディングドレス着るのに 目が腫れちゃうわよ。」

母も涙声で言う。
 
「コーヒー入れようか。」

と智くんが キッチンに立つ。
 


「明日、お姉ちゃんのドレス姿見たら パパ、絶対泣くよ。」

妹が鼻声で言う。
 
「泣くかよ、ただの試着で。」

父も、笑いながら言う。


徐々に心が落ち着いてくる。
 

「色々、ごめんね。でも、もう大丈夫だからね。ありがとう。」

私は、やっとそれだけ言う。


胸に詰まっている思いは、言葉では言い表せない。


でも、父も母も わかっていると信じる。


私の親だから。
 


「どうぞ。」と智くんが コーヒーを運んでくると
 

「麻有ちゃん、智くんにこんな事させて。」

と母が私を叱る。
 

「いいんです。麻有ちゃんも仕事しているので。同じだから。」智くんは優しい。
 


「パパ。見習ってよ。」

母は、父に言い。私と妹も頷く。




やっと、みんなに笑顔が戻る。

 
< 247 / 270 >

この作品をシェア

pagetop