あなただったんだ
席に戻ると部長が睨んでいた。

「長いトイレだな」

「すみません」

「本多から資料半分もらって。処理して」

「はい・・・すみません。本多さん、資料をください」

一瞬、悠也と目が合った。でも、以前のように上司の目を盗んで目線を交わすことはない。あくまで、事務的な視線だ。

「お願いします」

棒読みともとれるトーンで言う悠也。

私とは、関わりたくないのね。私だって、やりにくいけれど。

そして、午前中は淡々とその資料をこなした。

こんな空気の中で続けなければいけないのか・・・軽く暗い気持ちになった。

朋美がお昼に誘いに来た。

「・・・つらいよぉ、朋美」

「これは、もう、どっぷり、宮田くんとの恋にはまっちゃいなさい」

「はぁ?」

「彼、17時帰社になってたよ。帰り、誘っちゃいな」

「私から?誘うの?」

「もっちのろ~ん♪奈菜はその気アリアリだよ、って示すのよ。ついでに、本多くんと秋川さんに見せつけちゃえ~!!」

「でも、私、来月まで返事待ってって・・・言っちゃったよ」

「早まる分にはおっけっしょ!いい知らせなんだし・・・好きなんでしょ?」

「うん」

「だったら・・・善は急げ、よ!」

そう言う、朋美の顔が輝いて見えた。
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