『先生の色』〜桜の下で始まった恋は、色を変える〜
「立花さんとお酒飲めると思ってなかった」
先生は照れくさそうに
グラスについた水滴をなぞった
コンビニからすぐ近くの飲食店に入った
「急に誘ってごめん…
何から、話せばいいかな…」
ずっと会いたかった先生
目の前に先生がいることが
信じられなかった
「先生…元気でしたか?」
声が震えた
先生が私を見た
「…うん…
立花さんも、元気だった?」
声を出すと涙も出そうな気がして
私は黙って頷いた
「 …立花さんに‥謝らなきゃいけない…
ごめ‥」
「先生、まだ絵、好きですか?」
咄嗟に先生の言葉を遮った
「あ…うん、好きだよ…」
「…よかった…」
先生に謝られたくなかった
謝られたら
先生を好きだったあの夏のことが
全部なくなってしまう気がしたから…
「立花さんは?
相変わらず、毎日描いてるの?」
「毎日は、描いてないけど
美術館の受付けでバイトしてます
今日も、その帰りです
卒業したら、そこで就職する予定です」
「大学は?
4月から4年?」
「はい
先生と同じ大学」
「そっか…
頑張ったね」
優しい喋り方…変らない
少し話して私は安心した