『先生の色』〜桜の下で始まった恋は、色を変える〜

「立花さんとお酒飲めると思ってなかった」



先生は照れくさそうに
グラスについた水滴をなぞった



コンビニからすぐ近くの飲食店に入った



「急に誘ってごめん…
何から、話せばいいかな…」



ずっと会いたかった先生


目の前に先生がいることが
信じられなかった



「先生…元気でしたか?」



声が震えた


先生が私を見た



「…うん…
立花さんも、元気だった?」



声を出すと涙も出そうな気がして
私は黙って頷いた



「 …立花さんに‥謝らなきゃいけない…
ごめ‥」



「先生、まだ絵、好きですか?」


咄嗟に先生の言葉を遮った



「あ…うん、好きだよ…」



「…よかった…」



先生に謝られたくなかった


謝られたら
先生を好きだったあの夏のことが
全部なくなってしまう気がしたから…



「立花さんは?
相変わらず、毎日描いてるの?」



「毎日は、描いてないけど
美術館の受付けでバイトしてます
今日も、その帰りです
卒業したら、そこで就職する予定です」



「大学は?
4月から4年?」



「はい
先生と同じ大学」



「そっか…
頑張ったね」



優しい喋り方…変らない


少し話して私は安心した





< 283 / 344 >

この作品をシェア

pagetop