王子様に恋をした
「先ずはチェロ… 奏者はガーディアン侯爵家が令息、ロイド殿。」

「は?何?おっま!何言ってんだよ!」

ロイド様は殿下からいきなりお名前を呼ばれ、たいそう慌てておられます。

「お前と一緒に演奏して貰うのは、さっきまでの奏者の中から選ぶて、さっきお前言ったよな?」

と殿下にともすれば不敬と言われてしまってもおかしくないお言葉を返されるロイド様。

そんなロイド様のお言葉にも笑顔で対応される殿下は、本当にお優しく麗しく思いました。

そして、殿下とロイド様のお仲間に私も入れて頂きたいと願ったのでした。

そんな願いが天に通じたのでしょうか。

「ピアノ奏者は……アイリーン伯爵令嬢。お願い出来ますか?」

突然私の名前が聴こえ、私は素っ頓狂な声をあげそうになり、両手で口を押さえました。

隣にいらしたお兄様も、そんな私の様子に苦笑いをなさっておられます。

「シェヴェルディア伯爵家令嬢、アイリーン嬢は、いらっしゃいませか?」

「はい。ここに。」

とカーテシーをすると、私の周りにいらした方々がすっと左右に別れ、壇上までの道が出来ました。

「先程のアイリーン嬢の演奏はとても素晴らしかったので、是非私と御一緒して頂けませんか?」

殿下からのお言葉。しかも、そんな優しい笑顔で仰られたら、お断りなんて私に出来る筈もなく…

思わず震えそうになる声をどうにか抑えながら

「勿体なきお言葉でございます。謹んでお受け申し上げます。」

と最上級の礼をとりました。
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