戀のウタ
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 警官になった時でさえ市のホールで式典だった白河にとって管警局はまるで初めて踏み入れる別世界だった。

 同じ警察庁であるが自分のような片田舎の駐在勤務とは違う庁舎全体の小奇麗な内装と整然と組織立った雰囲気に飲まれそうになる。


 一応、白河も警官を志すと決心した時にはキャリア組を目指した。
 だがそこに及ばなかったから今、この空気に飲まれているのだと思う。

 キャリアとノンキャリアの差は言葉通り雲泥の差である。
 スタートラインの違いは勿論の事、昇給スピード・年収・待遇など同じ警察組織であっても格差は非常に大きい。

 白河はここに至れなかった悔しさを胸にしまい込み前へと進んだ。

 カウンターで用件を伝え、別室に待たされる。
 その時にボディチェックも受けた。

 同じ警官からボディチェックを受けるとは思ってなかったので白河は少し不快に感じたがそれも先程の悔しさと同様に胸にしまい込む。

 慣れないネクタイのきつさに少し溜息が出るが呼ばれるまで大人しく別室で待った。


 ややあって、――15分くらいだろうか。
 40歳半ばくらいのいかにもキャリアらしい気位の垣間見える警官に伴われエレベーターに乗った。


 エレベーターはぐんぐんと上昇し最上階で止まる。

 庁舎らしからぬ上質さのあふれるカーペットの敷かれた広い廊下を歩き一番奥の重厚な扉の前へ連れて来られた。

 先程の警官はどうやらここまでらしい。
 「どうぞ」と勧めるとすぐに踵を返した。
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