授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
また次のデートがあると思うと嬉しい。それを楽しみに一日一日を頑張れる気がする。
夜景に目を奪われていると、私の身体を背後から囲い込むように黒川さんがぴたりとくっついて手すりに両手をつく。

「ほら、あそこ、飛行機が飛んでる」

黒川さんが深く身を折って後ろから私の肩に顎をのせてきた。何の身構えもなく不意打ちで密着されるとドキリとしてしまう。彼に向けたほうの耳が妙に熱い。

「……ほんとだ」

彼の吐息を微かに感じて返事が一歩遅れた。意識してると気づかれたくなくて、何か話をしなければ……と頭の中で言葉を探していると、不意に黒川さんから問われる。

「さっき、坂田所長と何を話してたんだ?」

「え、いえ、別に大した話はしてないんですけど……」

うっかりすると黙り込んでしまいそうになって、咄嗟に当たり障りのない返事をする。黒川さんは勘がいい。だから下手に口を開くことはできない。

「黒川さんは腕のいい弁護士だから、もっと規模の大きい大手の弁護士事務所でも十分やっていけるのに、って坂田所長が言ってました。義理堅い男だからって……」

「……そうか」

黒川さんが私の背後でため息寄りの息をつく。

黒川さん……?

なにか気分を害するようなことを言ってしまったのかと思うと、私は彼の顔をまともに見ることができなかった。
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