授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「当時、まだ弁護士として駆け出しだった俺は、まだ自分の家族すら救える力がなくてね、そんなとき懇意にしていた教授の友人だった坂田所長を紹介してもらったんだ。あの人は、ああ見えて法曹界の重鎮なんだよ。今でも尊敬してる」

ああ、前に買い物の帰りに妹さんのことを口にした途端、黒川さんの様子が変だったのは、そのときのことを思い出して……。

「じゃあ、坂田所長が妹さんの冤罪を晴らしてくれたんですね」

「ああ、俺の四つ下で“真由”って言うんだ」

……ん? 真由? どこかで聞いた名前のような。

記憶力はいいほうだけど、なぜかその名前を聞いてもいつどこで耳にしたかよく思い出せない。そして真由さんがそんな目に遭ったということは、きっと黒川さんは検察側をよく思ってないに違いない。そんな一抹の不安が胸に過る。

「あの、黒川さんにとって検事ってどんな存在だと思いますか?」

「え?」

私の口から「検事」なんて単語が出てたのが意外だったのか、黒川さんは私に視線を向けると虚を突かれた顔をして目を瞠った。
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