授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「私の父が検事だってこと、いつ気づいたんですか?」

「ああ、一番初めのデートで行った料亭で『悪い事はどんなに隠しても必ず太陽に照らされる』って言っただろ? そのときだな、確信したのは。苗字も同じだし、だからその言葉を君の口から聞いたとき、動揺を隠すのに必死だったぞ」

黒川さんは苦笑いを含んだ笑みを浮かべて肩を竦めた。

――悪い事はどんなに隠しても必ず太陽に照らされる。

それは父がよく私に言っていた言葉だ。それがどうして親子だとわかる決め手になったのか不思議に思っていると、黒川さんが左右に唇を伸ばしてニッとした。

「松下検事が担当する公判の傍聴に何度か行ったことがあるが……裁判で有罪判決が出たときに、松下検事が必ず被告人に言うキメ台詞なんだ。思い出すだけでもゾクッとする」

悪い事はどんなに隠しても必ず太陽に照らされる。この言葉が出たときは、弁護士が負けるときだ。黒川さんにとってはできれば耳にしたくないとどめのキメ台詞なのだろう。
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