授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
ベッドから身体を起こしたと当時に、黒川さんが部屋に入ってきた。

「黒川さん、あの……今日はご迷惑をおかけしました」

ペコリと頭を下げて彼を見上げると、やんわりと目を細められる。

「俺たちはこれから夫婦になるんだから、こんなことで迷惑だなんて思うわけないだろ」

これから夫婦に……。

にこやかに笑ってそう言うけれど、私はどうしても明るく笑みを返すことができなかった。黒川さんがベッドの縁に腰を下ろし、私の頭をそっと撫でる。

「昨夜、雨に濡れたまま身体も拭かずに寝たんだろ? 風邪をこじらせた原因はそれだ。仕事も無理してたんじゃないか?」

黒川さんに言われて気づく。今朝、目が覚めたとき、私は着替えておらず服が湿っていたままだった。昨夜は何もする気力がなくてそのまま……。

はぁ、これじゃ風邪も引くはずだ。

「蒲池さんから今朝、君が仕事にも来てないし連絡もつかないと電話があって……何かあったんじゃないかって嫌な予感がした。だから新幹線じゃなくて国内線ですっ飛んで帰ってきたんだ」

「そうだったんですか、すみません……」

「蒲池さんには俺から連絡入れておいた。二、三日仕事を休んでゆっくりするといい、仕事のことは気にするなってさ」

弥生さんには私からも後で連絡しておこう。きっと心配してるよね。

「あの、黒川さん今日は仕事だったんじゃ……」
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