授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
まるでお城のようなレンガ造りの建物や、ピンクに染まった看板、酔ったカップルがイチャイチャしながら私の目の前を通り過ぎていく。

嘘でしょ……そんな――。

そこはいわゆるホテル街で、私にとってはいかがわしい雰囲気が漂う異空間のようだった。

どうして黒川さんと紗季さんがホテルなんかに? ここにあるホテルって、その、そういうホテル……だよね?

黒川さんに渡すつもりだった傘を持つ手が震える。そして思考回路が停止したまま黒川さんたちの後をつけていくと、一軒のホテルの前で何かを確認した後……二人は建物に入っていった。

なぜ?どうして?という疑問詞だけが頭の中をぐるぐる回っている。私は突き付けられた現実に呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
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