授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
――あのふたり、付き合ってたって噂があるんだよ。

ふと、聖子が言っていたことが脳裏に過る。“付き合っていた”とそのときは過去形だったから不安な気持ちも抑えることができた。けれど、二人でホテルに入ったのを今、自分の目で見てしまった。これは紛れもない事実だ。

やっぱりまだ……気持ちが繋がっていたの?

もうわからない……。

二人は今頃、嵐のようなキスをしながら身体を絡ませ合い、お互いに求めあって……。

あぁ! もう! そんなこと想像したくない!

何かの間違い。そう思いたかった。私は踵を返し、パンドラの箱を開けてしまったことを激しく後悔した。トボトボと歩く足取りが重い。雨脚がひどくなってくると、傘を差してはいるものの、まるで先日のデジャヴのようだった。

はぁ、雨の日が嫌いになりそう。これからどんな顔して黒川さんと会えばいいの……?

鼻の奥がツンとして、はぁ、と息を吐くと涙がこぼれた。拭えば拭うほどどんどん溢れてくる。
結局、マンションに着くまで涙は止まらず滲んだ視界のまま顔をあげると、マンションのエントランスの前に一台の黒い高級車が停まっているのが見えた。

ッ!? あの車は……。
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