授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
ナンバープレートを見てハッと息を呑む。すると、運転席から一人の男性が降りてきて私のほうへ足早に歩み寄ってきた。

「菜穂さん!」

名前を呼ばれると同時にくるりと背を向けてその場から立ち去ろうとしたけれど、その男性は意外に歩幅が広く、あっという間に私の背後に立っていた。

あの黒い車は父の車だ。恐る恐る振り返ると、そこにいたのは意外な人物、板垣刑事だった。

「あ、あの……」

「お迎えにあがりました」

「え?」

彼は傘も差さずに神妙な顔で私を見下ろしている。続いて助手席からもうひとり下りてきて、傘を差しながらゆっくり近づいてきたのは……。

「菜穂ちゃん、やっぱりこういうことだったんだね」

「……お、お父、さん」
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