授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「菜穂ちゃん、黒川先生には相応しくなかったって……どういうこと? 紗季ちゃんと関係って?」
板垣さんをチラリと見ると“時間だ”と言うように自分の腕時計を人差し指でトントン突いている。
弥生さんに詰め寄られ、泣き出したい感情が今にも暴れだしそうになる。唇を噛み締め、ギュッと目を瞑る。
「黒川先生と紗季ちゃんがホテルに入って行ったって……あの二人は――」
「ごめんなさいっ!」
もうそれ以上黒川さんの話を聞くのが辛くて勢いよく踵を返すと、私はそのまま店を飛び出した。弥生さんが私を呼び止めているけれど、そのまま転がり込むように車に乗り込んだ。
「本当にあれでよかったんですか? あまり穏便に話をしていたようには見えなかったんですが……」
店を離れ、当てもなく走る車の中で板垣さんが静かに声をかけてくる。私は涙を堪えてコクコクと頷くと、ズッと鼻を鳴らした。
「ほかに行きたい所はありますか?」
「……いいえ」
こんな気分で食事に行く気にもなれない。かと言って景色のいい所に行って楽しむ気にもなれない。
久しぶりに外に連れ出してもらったのに、板垣さんには悪いけど……全然楽しくなんかない。
それは隣に黒川さんがいないから。
黒川さんの声が聞けないから。
黒川さんの温もりに触れられないから。
板垣さんをチラリと見ると“時間だ”と言うように自分の腕時計を人差し指でトントン突いている。
弥生さんに詰め寄られ、泣き出したい感情が今にも暴れだしそうになる。唇を噛み締め、ギュッと目を瞑る。
「黒川先生と紗季ちゃんがホテルに入って行ったって……あの二人は――」
「ごめんなさいっ!」
もうそれ以上黒川さんの話を聞くのが辛くて勢いよく踵を返すと、私はそのまま店を飛び出した。弥生さんが私を呼び止めているけれど、そのまま転がり込むように車に乗り込んだ。
「本当にあれでよかったんですか? あまり穏便に話をしていたようには見えなかったんですが……」
店を離れ、当てもなく走る車の中で板垣さんが静かに声をかけてくる。私は涙を堪えてコクコクと頷くと、ズッと鼻を鳴らした。
「ほかに行きたい所はありますか?」
「……いいえ」
こんな気分で食事に行く気にもなれない。かと言って景色のいい所に行って楽しむ気にもなれない。
久しぶりに外に連れ出してもらったのに、板垣さんには悪いけど……全然楽しくなんかない。
それは隣に黒川さんがいないから。
黒川さんの声が聞けないから。
黒川さんの温もりに触れられないから。