授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「どうしてそんなこと私に? 父からまだ言うなって言われていたんじゃ?」
「菜穂さんに覚悟を決めてもらおうと思って……そんな余裕もないままじゃ、あまりにも気の毒です」
「あっ……!」
真面目で紳士な板垣さんが、不意に男の顔になる。そして私の腕を取ったかと思うと勢いよくその胸に引き込んだ。厚い胸板にぴたりと身体寄せられ、両手で突っぱねようにもガッチリと抱き込まれて身動きが取れない。
「あ、あの!」
「菜穂さんを幸せにするのは、俺じゃだめだなんて思ってません。時間はかかってもきっとあなたは俺を受け入れてくれるはずです」
「やめて!」
俺を受け入れてくれるはず……だなんてどこからそんな自信が湧いてくるのか。身を捩ると、顔に影がスッと落ちて、その気配に私は短く息を呑んだ。
嫌っ! キスされる!
黒川さん以外の人に唇を奪われるなんて、想像しただけでも身の毛がよだつ。寸でのところで私は咄嗟に手を振り上げ、思い切り彼の頬をビンタした。パシンと乾いた音が部屋に響いて、抱きしめる腕が緩んだ隙に後ずさる。
「菜穂さんに覚悟を決めてもらおうと思って……そんな余裕もないままじゃ、あまりにも気の毒です」
「あっ……!」
真面目で紳士な板垣さんが、不意に男の顔になる。そして私の腕を取ったかと思うと勢いよくその胸に引き込んだ。厚い胸板にぴたりと身体寄せられ、両手で突っぱねようにもガッチリと抱き込まれて身動きが取れない。
「あ、あの!」
「菜穂さんを幸せにするのは、俺じゃだめだなんて思ってません。時間はかかってもきっとあなたは俺を受け入れてくれるはずです」
「やめて!」
俺を受け入れてくれるはず……だなんてどこからそんな自信が湧いてくるのか。身を捩ると、顔に影がスッと落ちて、その気配に私は短く息を呑んだ。
嫌っ! キスされる!
黒川さん以外の人に唇を奪われるなんて、想像しただけでも身の毛がよだつ。寸でのところで私は咄嗟に手を振り上げ、思い切り彼の頬をビンタした。パシンと乾いた音が部屋に響いて、抱きしめる腕が緩んだ隙に後ずさる。