授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「身体を拘束してキスしようとするなんて! あなたは自分の欲求を一方的に私に押しつけているだけです。そんな人、絶対に好きになんてなれない、これからもずっと!」

我に返った板垣さんは自分のしたことに放心して、顔を歪めると「すみません」と小さく漏らした。

「あまりにも気の毒? そんなふうに思うなら、ここから出して! 私を黒川さんの所へ連れて行って!」

叫ぶように声を張る。もしかしたら騒ぎを聞きつけて誰か来るかもしれない。けれど、そんな気を配る余裕もなくて私はあふれ出す感情を抑えきれずに両手で顔を覆った。

「すみません……」

「なにに対しての謝罪? もういいから私を放っておいて……」

今にも消え入りそうな涙声で訴えると、板垣さんはギュッと拳を握ることしかできないまま部屋を後にした。
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