授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
いつの間に食べ終わったのか、黒川さんの手元にあんパンはもうない。

「ベーカリーカマチのあんパンは格別です。私もここのあんパン以外は食べられません」

私も、と言ったのは今日、黒川さんが店に来たときに『ここのあんパン食べたら、ほかで食べられなくなっちゃって』と言っていたのを聞いていたからだ。私と同類だと思うとつい嬉しくなってしまう。

「ああ、わかるよその気持ち。どの店よりもうまいもんな」

「じゃあ、私たちあんパン同盟ですね」

「あんパン、同盟?」

しまった。調子に乗って意味不明なことを言ってしまった。きょとんとしている黒川さんになんて言い繕おうか考えて、乾いた笑みを浮かべる。

「えっと、ベーカリーカマチのあんパンを推していこうっていうか……」

あぁぁ、私なに言ってるんだろ。馬鹿! 黒川さんきっと引いてるよね……。

そろりと視線をあげると黒川さんはずっと俯いていている。不可解な女だと思われた。そう絶望していると……。

「あっはは!」

しばらくすると黒川さんが大きく肩を震わせて、声を立てて笑い出した。

「君は面白いな。なるほど、あんパン同盟か」

よっぽどおかしかったのか、まだ尾を引くようにクツクツと笑いを噛み殺している。

「すみません、変なこと言っちゃいましたね」

「いや、俺もそのあんパン同盟を締結できて光栄だ。ああ、もうこんな時間か……」
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