授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
前髪を掻き上げて腕時計を見るその仕草にドキドキする。そして、ハッと自分はおつかいに来ているだけで彼の仕事の邪魔をしに来たのではないことに気づく。

「すみません、長い時間お邪魔してしまって、もう帰らないと」

「君、明日の夜、時間空いてるか?」

そそくさと帰り支度をしてソファから立ち上がると、黒川さんがそっと声を潜めてそう言った。

「明日、ですか? はい。特に用事はないです」

「ならよかった。一緒に夕食行かないか? 実のところ、もっと君と話がしたいんだ」

へっ!? ええっ!? 一緒に、夕食……こ、これって、もしかしてもしかすると……。

「これでもデートに誘ってるつもりなんだけど?」

呆然としている間に黒川さんが先回りして答えを口にする。

ぐっと身を寄せられて近距離で目が合うと心臓が跳ね、おかげで返答が遅れた。何度か睫毛を上下させてからようやく「えっ」と声が出た。そのとき。

「おーい、黒川君、この前の事案の書類で聞きたいことがあるんだけど」

パーテーションの向こうから坂田所長の声がしてハッとする。今まで囲われていたから忘れていたけれど、ここは事務所の一角なのだ。

「すぐ行きます」
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